リードナーチャリングで顧客を獲得。実施前の準備から手法まで

リードナーチャリング

リードナーチャリングで顧客を獲得。実施前の準備から手法まで

企業にとって、顧客の獲得は最大の課題です。しかし見込み顧客を獲得するだけでは、利益を最大化することができません。そこでマーケティングの手法として浸透しつつあるのが「リードナーチャリング」です。

有効なリードナーチャリングを実施できれば、顧客の獲得と利益の最大化を目指すことが可能となります。そこで今回はリードナーチャリングの必要性、具体的な戦略・手法について詳しく解説していきます。

そもそもリードナーチャリングとは?

まずはリードナーチャリングについて具体的な定義や必要とされる理由について明らかにしていきましょう。

見込み顧客を育成すること

リードナーチャリングとは、一言でいうと「見込み顧客を育成すること」です。獲得した見込み顧客を育成することにより、将来的な購買につなげるためのマーケティング活動を指します。

これまでの営業手法は、展示会やテレアポを実施して、見込み顧客となりうる相手に対して個別にアプローチしていく「プッシュ型」の方法がメインでした。しかし、この方法はアプローチの範囲が狭まってしまうことや、アプローチに多くの人員を割く必要があるという問題があるため、非効率になりやすい面がありました。

一方でリードナーチャリングでは、将来的に顧客となる見込みのある層に対して、ウェブ上で情報を発信したり、定期的にメルマガを届けたりなど、中長期的に関係を作っていくことに主眼を置きます。
これにより、自社サービスや商品への購入意欲を徐々に高めていき、将来的な顧客になってもらうことを目指します。

この手法は、類似の顧客に対して一斉に情報を届けることが可能です。また、ユーザーからの消費行動を待ち構えた場所に広告などを配置する「プル型」の方法でもユーザーに商品を購入してもらうことができるようになるため、効率的な営業活動が可能になるのです。

リードナーチャリングが重要な理由

ではなぜ、リードナーチャリングの重要性が高まっているのでしょうか?その理由は、顧客の購買行動と市場の変化にあります。

インターネットの普及によって、顧客がサービスの成約や商品の購入といったアクションを起こす前に、自分で情報を調べることが当たり前になり、これまでのようにテレビCMや新聞広告などの「プル型」のマーケティング効果が薄れてきているのです。これは、BtoCだけでなくBtoBでも同様の傾向にあります。

また、情報を得やすくなった結果、顧客は時間を掛けて購入を検討するようになったため、商品を認知してから購買に至るまでの時間が長くなっています。

比較サイトでのサービスの比較やSNSで気軽に企業へ問い合わせるといった、複数のチャネルによって商品を検討するといった具合に、購入までのプロセスが複雑化しているのです。

こうした背景により、セールス担当者のみで全ての顧客をフォローしていくことが難しい状況にあります。そこで、中長期的に顧客を育成することを仕組化し、効率的な営業活動を行えるリードナーチャリングという手法に注目が集まっているのです。

BtoBマーケティングの流れ

BtoBのマーケティング施策の一つであるリードナーチャリングですが、その前段階であるリードジェネレーションと、リードナーチャリングの後段階であるリードクオリフィケーションについても解説していきます。

リードジェネレーション

リードジェネレーションとは、見込み顧客を獲得することを目的としたマーケティング施策です。例えば、テレアポや、展示会での名刺獲得、自社サイトへの問い合わせなどがこれにあたります。

次のステップであるリードナーチャリングを行う対象を多くするためにも、リードジェネレーションでは、より多くの見込み顧客情報を獲得しておく必要があるのです。

リードクオリフィケーション

リードジェネレーションで獲得した見込み顧客に対して、リードナーチャリングを行い購買意欲の高まった見込み顧客の中から、より購買につながる見込みの高い顧客を選別するのがリードクオリフィケーションです。

購買意欲の高い顧客のみに絞って営業を行うことで、受注確度が高まり、効率の良い営業活動へとつながります。このリードクオリフィケーションがマーケティング施策の最終プロセスであり、成約へとつなげるために最も重要なステップであるといえます。

リードナーチャリングのメリット

リードナーチャリングを行うことで、企業にどのようなメリットがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

見込み顧客の損失を防ぐことができる

確度の高い見込み顧客へのアプローチに力を注ぐ一方で、一度失注した見込み顧客や、確度の低い見込み顧客については放置してしまうこともあるでしょう。しかし、市場や見込み顧客の状況の変化などによって、再び自社の商品やサービスに興味を持ってくれるかもしれません。

そうした顧客に対してナーチャリングを継続し、関係性を維持しておくことで、顧客を失ってしまう機会損失を防ぐことができます。

営業活動の短縮化が可能に

受注確度が低い顧客にアプローチをかけても効果が薄く、かけたリソースが無駄になってしまいます。営業活動にどれだけ時間をかけても、実際に受注に結びつかないケースもあるでしょう。

そこでリードナーチャリングで、顧客をある程度育成してからアプローチをかければ、訪問やメールのやりとりといったアプローチの回数も減らせますし、受注率も向上します。受注までの期間が短縮される分、営業活動の短縮・効率化につながるでしょう。

顧客データを有効活用できる

セミナーや展示会を開き、多くの顧客データを獲得しているにもかかわらず、確度の高い顧客を優先してしまい、その他の顧客については放置してしまっていることもあるでしょう。そうした休眠顧客や見込み顧客に対し、適切なタイミングでアプローチができれば、再び自社の商品やサービスに興味を持ってくれる可能性が向上します。また、顧客の属性や趣向にあわせてアプローチを変えることで、成約率を向上させられるかもしれません。

このようにナーチャリングによって、フォローしきれていない顧客データを最大限に活用することも可能になるのです。

営業活動を仕組み化できる

顧客自らが情報収集し、商品やサービスについて調べてから購入するというプロセスがとりやすくなっている現状、購買までの期間が長期化する傾向にあります。それにあわせて営業活動も長期化せざるを得なくなっているのです。

営業活動の長期化によって、営業の疲弊や取りこぼしにつながってしまうことが懸念されています。そこでリードナーチャリングによって顧客のステータスに応じたコミュニケーションを設定することで、営業活動の長期化によって発生する営業疲れや、顧客の購買意欲や興味の段階を見誤ってしまい失注するという問題を防止することができます。

リードナーチャリングの課題

リードナーチャリングによって生じる課題・問題点についてもあらかじめ把握しておきましょう。リードナーチャリングでは、大きく分けて下記3つのような問題が生じることがあります。

すぐには結果が望めないことも

ナーチャリングの対象となる顧客は「自社の商品やサービスに興味を持ち始めたばかり」であることが多く、その段階から相手の興味やステータスに併せたアプローチを行っていくため、すぐに成果につながる可能性は低いです。

テレビCMや雑誌広告のように、始めてからすぐに効果が出るようなものではなく、商品やサービスによっては、効果が表れるまで数カ月から1年以上かかることもあります。成果が出るまでは、根気強く待つことも求められます。

導入にリソース・コストがかかる

メールマーケティングを行う場合、メールを送るリストの精査やステータスに応じた文章の作成、クリック率や開封率の調査などを行わなければなりません。
セミナーを行う場合にも集客メールの作成や会場の手配、参加者リストの管理など、やるべきことが多くあります。リードナーチャリングには、これらの人的なリソースがかかります。

併せて、顧客データを一元化するためのソフト、ナーチャリングに適したMAツールの導入など、システマチックに行うためのコストが必要です。

集客をしていることが前提

マーケティングにおいてリードナーチャリングは、リードジェネレーション(見込み顧客の創出)を行った次のステップとして位置づけられています。育成対象となる顧客がいなければ、そもそもリードナーチャリングは行えません。

集客がうまくいっていない場合、リードナーチャリングよりも先にまずはリードジェネレーションの問題を解消することが求められます。

リードナーチャリングのプロセス

自社の商品やサービスの受注につなげるためのリードをどのように育成すれば良いのでしょうか?戦略の指針や準備すべきことを解説します。

1. 見込み顧客のデータの一元管理収集・分類

営業担当者が個別で持っている見込み顧客のデータを一箇所に収集します。収集場所は自社データベースやExcelでまとめてデータ化するなど、統合・一元化することが望ましいでしょう。

データを収集できたら、そのデータを顧客ごとに興味のある分野やコンテンツごとに分類し、さらに興味や購入意欲がどの程度であるのかを段階別にカテゴライズしていきましょう。これらは見込み顧客に対して最適なアプローチを行うために重要なデータです。

興味のない顧客に手厚い営業をかけても敬遠される可能性が高いですし、逆に興味の強い顧客に対して、初心者レベルの知識を提供しても、既知である可能性が高く効果が薄くなってしまいます。

2. シナリオの設定・セグメンテーション

ナーチャリングにおけるシナリオとは、顧客に対するアプローチ方法を指します。メールやセミナーなどの方法の中で、どんなアプローチ方法を選択するのか、そして具体的にどんなストーリーで成約まで結びつけるのかを想定してシナリオを設定します。

ステップメールを例に挙げれば、まずは収集・分類した顧客データの中からどんな人に対してメールによるアプローチが最適かを選定するとともに、何段階のステップに分けてメールを用意するのか、メールを送る頻度、メールの次の段階のアプローチなどを決めていきます。

シナリオなくしてナーチャリングは成り立ちません。より効果的なシナリオをセグメントに分けて設定していきましょう。

3. ニーズに合わせたコンテンツを作成する

シナリオの設計ができたら、コンテンツを作成します。

見込み顧客の共感を得られる、興味を引くことができる内容にできるかどうかが成功のカギです。コンテンツの作成は時間もコストも掛かるため、必要に応じて外部に制作を依頼することも検討する必要があるでしょう。

4. 施策を実行し、効果を分析する

シナリオの制定とコンテンツ作成を経たら、具体的に施策を実行に移しましょう。このとき、単に実行しただけで終わらせないようにすることが成功のポイントです。

施策の効果を検証し、改善すべき部分は改善して効果を高めましょう。問題点や改善点を適切に分析した上で施策を実行し、さらにその結果を分析・改良するというプロセスを繰り返すことが大切です。

リードナーチャリングの具体的な手法

リードナーチャリングを行うための具体的な手法について解説します。商品やサービス、客層に合わせた手法を選択しましょう。

メルマガ配信やSNS

メルマガでよく使われるナーチャリングの手法に「ステップメール」と呼ばれるものがあります。ステップメールとは、メール受信者の興味や受注意欲に合わせて、段階的にメールを送っていく手法です。

初期のメールでは自社の紹介やサービスの概要、次の段階ではサービスの使い方や、使うことでどのようなメリットが得られるのかといったように、メールの内容を変えることで顧客により興味を持ってもらい、購買につなげていきます。

また、SNSマーケティングも欠かすことのできない手法です。SNSを利用している企業や、その従業員に対してアプローチすることができます。事業の認知向上やブランディングにもよく使われる手法です。

どのSNSを選定するのかは、事業のターゲットと近い人が利用しているかどうかを見極めましょう。SNSのユーザー属性と事業ターゲットが合致していないと、SNSマーケティングの効率は著しく落ちます。

セミナーを開催

セミナーは準備や運営にコストはかかりますが、メールやSNSよりもコミュニケーションを密に取れるという特性があり、より成果の高いナーチャリングに結びつきます。

近年はウェビナー(Web上で行うセミナー)を行う企業も増えており、SNSと併用したり、回数を分けて録画配信を行ったりするなど、多様性についても注目が集まっています。

セミナーに参加する時点で自社のサービスにある程度興味を持っていることが前提となりますが、その分受注につながりやすい顧客を集めることができるでしょう。

オウンドメディア

企業が自社の事業やサービス認知を広めるために運営するメディアで、サービスの紹介から日常生活の悩みやニュースまで、内容は多様です。

そのまま商品やサービスの購入に直結することを目的としたメディアもあれば、自社の宣伝や資料請求、問い合わせにつなげることが目的である場合も多く、顧客側のアクションもさまざまなものを想定しています。

顧客の興味段階やアクションに応じたコンテンツを作成することで、集客やナーチャリングに結びつけやすい一方、ナーチャリングの中では時間と労力がかかってしまう手法のため、途中で頓挫してしまうケースも少なくありません。

WEB履歴のトラッキング

「Cookie」を利用した顧客情報の分析とアプローチを行う手法です。Cookieとは、Web上に残るユーザー情報のことで、ログイン状態の維持やショッピングサイトで買い物カゴに商品を残すといったさまざまなシーンで幅広く活用されています。

このCookieによって、企業はユーザーの情報を分析できます。どんなページにより長く滞在しているのか、どんな商品やサービスを普段購入しているのかを知ることができるので、顧客がより興味を持つコンテンツやサービスから営業をかけることができるのです。

BtoBでも、企業アカウントのトラッキングを行い、どんなページに長く滞在しているのかを分析すれば、アプローチの手がかりとなるでしょう。顧客の行動履歴に基づいた最適なナーチャリングを行うため、Cookieを活用する企業は多くあります。

効果的なコンテンツ活用方法

オウンドメディアやメルマガなど、作成したコンテンツでより高い成果をあげるためには、どのような点に注目すべきでしょうか。ここではコンテンツの活用方法について解説します。

見込み顧客のニーズを明確にする

コンテンツを活用するために重要なことは「自社がプッシュしたい商品やサービスを紹介する」のではなく、「見込み顧客が何を求めているのかを把握すること」です。

顧客が求めていない情報やコンテンツを発信し続けていても、顧客にスルーされてしまうばかりか不快感を持たれかねません。せっかく育成しようとした顧客が離れてしまうこともあります。何を売りたいかよりも、相手が何を求めているのかを顧客情報や属性から予測し、明確にしましょう。

アクションを分析

顧客が取ったアクションを分析しましょう。「サービスに登録した」「問い合わせをした」「資料請求をした」など、さまざまなアクションの中で何を選択したかによってアプローチを変えることが、成約率の向上につながります。

サイトを訪れただけよりも資料請求や問い合わせをした見込み顧客の方が成約につながる可能性は高く、より丁寧な営業をかけるなどの企業側のアクションも決定しやすくなるでしょう。

アクションを分析する方法としては、アクション別に点数をつけて、トータル点数を指標にする「スコアリング」が有効です。「どんなアクションがユーザーが起こしやすいのか」「どんなコンテンツからのアクションが多いのか」などを数値化し、ナーチャリングの改善に活かします。

効率的なコンテンツ運用

コンテンツを作成するにあたっては、十分な人的・時間的なリソースを割く必要があります。顧客が興味を持つようなコンテンツを作成し、その内容が充実していることが求められるため、ライター・デザイナー・編集者などの人材を揃えなければなりません。

コンテンツが公開される頻度が低いことや、顧客を満足させるだけの内容のないコンテンツは顧客から飽きられ、離れられてしまいます。単にコンテンツを作成するだけでなく、滞在時間や離脱率などのアクションを分析しながら改善しましょう。

リードナーチャリングを成功させるには

リードナーチャリングを成功させるために意識しておきたいポイントについても見ていきましょう。

KPIを設定する

KPIとは「重要業績評価指標」のことで、目的の達成に向けた中間指標のことです。リードナーチャリングを成功させるためにも、各施策を評価するための適切なKPIの設定が重要となります。リードナーチャリングで行う各施策の目的、さらにどのような指標を達成することで成果と呼べるのか明確にしておきましょう。

リードナーチャリングの主なKPI

メール開封率
配信したメールが開封された割合を示す開封率は、メールの内容や、件名、配信時間が適切であったかどうかを図ることのできる指標です。
クリック率
配信したメール本文内のURLがクリックされた割合です。計測用のURLにしておくことで、受信者がクリックした日時などもわかり、その後の分析に活用することができます。また、クリックされたURLから受信者が関心のあるコンテンツを知ることもできるでしょう。
コンバージョン率
配信したメールの中でURLがクリックされ、さらにそこから問い合わせや、申し込み、購入などのコンバージョンにつながった割合がコンバージョン率です。コンバージョンはメール配信施策の最終目的となり、このコンバージョン率の高さが配信したメールの評価基準となります。

ホットリードの定義を定める

リードごとに適切なアプローチを行うためには、リードの興味度合いを客観的に判断する必要があります。そのために用いられるのがスコアリングです。

スコアリングは、リードの行動に基づいて点数をつけ、リードごとの合計点を算出します。そして一定の点数を超えたリードを自社の商品やサービスに対しての興味関心度が高い見込み顧客である「ホットリード」として抽出します。

このようにスコアリングで、見込み顧客の行動を数値化することで、客観的にホットリードを判断することができます。

MAツールの導入

リードナーチャリングを行うには、顧客情報の管理、メール配信、見込み顧客の抽出など様々な工程があり、それを全て人力で管理するとなると限界があります。MAツールの導入は、これまで人的工数をかけて行っていた作業を自動化し、リードナーチャリングの効率化を図ることができます。

その結果、コンテンツ作成などに時間を割けるようになり、より精度の高いリードナーチャリング施策を行うことができるのです。

営業とマーケティングの連携が必須

顧客情報の収集・分析を行うにあたっては、営業との連携が大切です。営業が収集した名刺やメールリストなどが、リードナーチャリングの前提であるリードジェネレーションにおいて重要だからです。

また、営業側も、マーケティング業務によって分析されたデータや、ナーチャリングによって育成された顧客にアプローチをかけることで成約率を高めることができます。MAツールのみだと、Webサイトやメールなど、情報収集の手段が偏ってしまいます。そこに営業からの現場の話や直接的なフィードバックを挟むことで、マーケティングの精度をより高めることにもつながるのです。

このように、リードナーチャリングを成功させるには、営業とマーケティングを連携させ、双方の業務を効率化していくことが求められます。

まとめ

リードナーチャリングは、現在の市場において欠かすことができない手法となっています。顧客が情報を自ら収集し、分析することで成約に至るまでの期間が長期化する傾向にあり、休眠顧客の発掘や、自社顧客の育成が重要になっているためです。

ナーチャリングを行う際は、その前の段階であるリードジェネレーションや、顧客情報の適切な分類も重要になります。

ナーチャリングはメルマガやセミナーなどさまざまな手法がありますが、営業と連携をとりながら、顧客ごとに最適なシナリオを設定しましょう。ターゲットごとに適切な手段でアプローチをかけることで、より効率的な顧客獲得につながります。