BtoB企業がビジネスで成功するために活用するマーケティング手法の1つにSWOT分析があります。「名前は聞いたことがある」「社員研修で実際にSWOT分析を体験した」という方も多いのではないでしょうか。
SWOT分析は、BtoB企業の戦略を立てるときに必要なフレームワークです。そこで今回は、SWOT分析について、併せてマーケティングでの活動事例などをご紹介します。
- ▼この記事で分かること
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- SWOT分析を行う目的
- SWOT分析のやり方
- SWOT分析の活用事例
- 効果的なSWOT分析を行うためのポイント

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Contents
SWOT分析とは?
SWOT分析のSWOTとは、以下の4つの英語の頭文字から取った造語です。
- S 「Strength(強み)」
- W 「Weakness(弱み)」
- O 「Opportunity(機会)」
- T 「Threat(脅威)」
Strength(強み)とWeakness(弱み)は企業の内部環境の分析、Opportunity(機会)とThreat(脅威)は外部環境の分析を指し、これらを分析していくことにより、企業戦略を導く方法がSWOT分析です。それぞれの項目について見ていきましょう。
内部環境
企業の内部環境には、競合他社との比較のほか、自社の蓄積してきた技術や資産、そして顧客から見た視点などがあります。
- S 「Strength(強み)」
- Strengthは内部環境のプラス要素です。自社や自社商品の長所や得意とするところであり、競争優位性や他社にはない強みを指します。
たとえば、高いブランド力、優れた技術力、独自のノウハウ、強固な顧客基盤などが該当します。これを活かすことで市場での優位性を確保できます。
- W 「Weakness(弱み)」
- Weaknessは内部環境のマイナス要素となります。自社や自社商品の短所や苦手とするところであり、競争上の不利な要素や改善が必要な点を指します。
たとえば、知名度の低さ、資金力の不足、人材の不足、技術の遅れなどがあります。弱みを把握し、克服することで競争力を高められます。
外部環境
一方、外部環境はマクロ環境要因(経済、世界情勢、政治、法規制、社会、文化トレンド、技術革新)とミクロ環境要因(関係取引先、流通業者、競合他社の状況)です。
- O 「Opportunity(機会)」
- Opportunityは外部環境のプラス要素で、外部環境の変化によって生まれる自社にとっての好機です。たとえば、市場の成長、新技術の登場、法規制の緩和、消費者ニーズの変化などがあります。これを活かすことでビジネスの拡大が可能になります。
- T 「Threat(脅威)」
- Threatは外部環境のマイナス要素となり、事業に悪影響を及ぼす外部要因を指します。
たとえば、競争の激化、市場の縮小、技術革新の遅れ、規制の強化、経済の低迷などがあります。これらのリスクを分析し、適切な対応策を講じることが重要です。
SWOT分析の目的
SWOT分析は、企業成長のための自社の商品開発、販売、マーケティングなどの戦略作りに活用する目的があります。
ビジネスにおいて戦略や計画を立てるには、自社の現状や競合企業、市場の将来性といった複数の要素を正しく把握し、分析する必要があります。それらの要素を、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つに整理し、分析しやすいようにフレームワーク化したものがSWOT分析です。
ちなみにSWOT分析は戦略決定の前後両方で活用されることがあり、SWOT分析を元に戦略を決定する場合と、決定した戦略をSWOT分析を用いてレビューする場合があります。
SWOT分析を活用すべきタイミング
SWOT分析を活用すべきタイミングは以下の通りです。
経営戦略の見直し時
市場環境や競争状況は常に変化しており、定期的に経営戦略を見直すことが重要です。たとえば、業績が低迷している場合や、競争力を強化する必要がある場合に、SWOT分析を行うことで自社の現状を把握し、適切な戦略を立案できます。また、企業の成長フェーズに応じて強みを活かし、弱みを改善することで、持続的な成長を目指せます。
新規事業や新製品の企画時
新たな事業や製品を開発する際には、市場の機会と脅威を正確に分析することが不可欠です。新市場への参入を検討する場合、競争環境や消費者ニーズ、自社のリソースを踏まえて成功の可能性を評価できます。また、自社の強みを活かせる分野かどうか、想定されるリスクは何かを明確にすることで、戦略の精度を高め、リスクを最小限に抑えることが可能です。
競合環境が変化した時
新たな競合企業の参入や、既存の競合による新たな施策が市場に影響を与える場合、自社の競争力を再評価する必要があります。競争が激化しシェアが低下している場合、SWOT分析を活用して強みを活かせる戦略を再構築できます。また、新たな技術革新や業界トレンドの変化により市場構造が変わる際にも、自社がどのように対応すべきかを明確にすることができます。
組織改革や事業拡大時
企業の成長に伴い、組織の体制や事業規模を見直すタイミングでSWOT分析を活用すると、適切な経営判断ができます。たとえば、新しい市場への進出、海外展開、人員増強などの際に、自社のリソースや競争力を整理することで、成長の方向性を明確にできます。
また、内部の弱みを洗い出し、組織の課題を改善することで、より強固な経営基盤を築くことが可能になります。このように、SWOT分析は企業の戦略策定において幅広く活用できるツールであり、定期的に実施することで、環境の変化に適応しながら持続的な成長を目指すことができます。
知っておきたいSWOT分析のメリットとデメリット
ここではSWOT分析を実践するメリットとデメリットについても理解を深めておきましょう。
メリット
SWOT分析では、内部環境と外部環境、機会と脅威などの両側面に目を向けることで、全体の状況を客観的に捉えて分析できる点がメリットです。
また、各要素について議論を進めることで、分析対象となった事業への理解が深まり、携わったチーム全体としての意思の統一や、すり合わせがしやすい点もメリットといえるでしょう。
デメリット
内部環境の各特徴要素を「強み」と「弱み」のどちらに分類するかは、考え方や分析者によって異なるでしょう。
しかし、SWOT分析においてはこうした判断しづらい要素も必ずどちらかに分類しなければなりません。こういった点がデメリットとされることもあるようです。
SWOT分析のやり方
ここでは、SWOT分析の手順についてご紹介します。
1.外部環境の分析
SWOT分析では、まずOpportunity(機会)とThreat(脅威)を分析し、外部環境(ビジネスを行う機会)を明らかにします。分析の際は、自社の強みや弱みを単なる自己評価や自己満足に終わらせず、顧客ニーズや市場動向から捉えることが必要となります。
- Opportunity(機会)の分析
- 市場の成長や新技術の登場、消費者の行動変化など、自社の成長につながる要素を見つけ出します。機会を最大限に活かすことで、競争優位性を確立できます。
- Threat(脅威)の分析
- 競争の激化や規制強化、経済の低迷など、企業の成長を阻害する外部要因を特定します。脅威に対して適切な対策を講じることで、リスクを最小限に抑えることができます。
- 具体的な項目
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- 「機会」
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- 市場の成長
- 新技術の登場
- 消費者ニーズの変化
- 競合の撤退
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- 「脅威」
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- 競争の激化
- 法規制の強化
また、外部環境の分析にはいくつかのフレームワークを利用することをおすすめします。マクロ環境(自社ではコントロールできないような、大きな外部環境)要因の分析には「PEST分析」、商品のライフサイクルから分析を行う「PLC分析」、業界内の競合度合いを分析する「5F分析」など、自社の目的に合ったフレームワークを選んでください。
- PEST分析
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PEST分析とは、市場のマクロ環境を分析する際に使用するフレームワークです。- 政治的要因(Politics) ・・・ 法律・税制改正
- 経済的要因(Economy) ・・・ 景気や物価・為替の変動
- 社会的要因(Society) ・・・ 生活者のライフスタイルや意識変化
- 技術的要因(Technology) ・・・ 商材やマーケティング技術の発展
これらの要素は、自分たちで制御できるものではありませんが、ビジネスを行ううえでは必ず影響を受けます。自社のビジネスを取り巻くこれらの要素を予め整理していくことで、自社にとっての機会や脅威となる要因を踏まえたマーケティング戦略を立てることができるでしょう。
- 5F(ファイブフォース)分析
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5F分析とは、業界の収益性に影響がある競争要因を整理し、分析するために使われるフレームワークです。- 新規参入業者の脅威 ・・・ 今後の競合性
- 買い手の交渉力 ・・・ 値下げニーズなどによる利益の圧迫
- 売り手の交渉力 ・・・ 原価の高騰などによる利益の圧迫
- 代替品の脅威 ・・・ 別のソリューションにニーズを奪われる
- 競合との敵対関係 ・・・ 価格・品質など、競合との競争要因
1つ前にご紹介した「PEST分析」は、市場の外的環境をマクロな視点で分析する手法ですが、こちらの「ファイブフォース分析」は、ミクロな視点で分析する手法となります。5つの要素それぞれが提供価格とコストに影響を及ぼしており、これらを整理しておくことで、現状の収益性におけるボトルネックの分析や競争におけるポイント、今後の展望などを見つけやすくなります。
2.内部環境の分析
内部環境は外部環境によって強みにも弱みにもなり得るので、外部環境を分析した後に内部環境(自社の現状)であるStrength(強み)とWeakness(弱み)を列挙していき、自社の状況、ポジションを明確にしましょう。
- Strength(強み)の分析
- 競合に対する優位性を持つ要素を特定します。ブランド力や技術力、独自のノウハウなど、事業の成長に貢献する強みを明確にし、それを最大限に活用する戦略を考えます。
- Weakness(弱み)の分析
- 自社が抱える課題や競争上の不利な点を洗い出します。弱みを正確に把握し、改善策を講じることで、競争力の向上につなげます。
- 具体的な項目
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- 「強み」
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- ブランド力
- 優れた技術力
- 高いマーケティング力
- 財務基盤の安定
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- 「弱み」
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- 知名度の低さ
- 技術力の不足
- 販売チャネルの弱さ
- 資金力の不足
内部環境分析では、4C分析や4P分析といったフレームワークを用いると分析しやすくなるでしょう。
- 4P分析
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4Pとは、商品・サービスを世に売り出していくマーケティング戦略を立てる際に使われる「マーケティング・ミックス」で使われるフレームワークの1つです。- 製品(Product) ・・・商品・サービス自体の機能・価値
- 価格(Price) ・・・機能・価値・競合関係から決める価格
- 流通経路(Place) ・・・商品・サービスの販売方法、場所
- プロモーション(Promotion)・・・販促の方法・ターゲット
これまで整理してきた、「自社を取り巻くマクロ・ミクロな環境」や「競合との力関係」、「自社の強み・弱み」を整理した上で、実際に商品やサービスをどの様に販売していくかを考える、非常に重要なフレームワークとなります。
- 4C分析
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4Cとは、商品・サービスの販売戦略を顧客の視点で捉えようとする動きによって生まれたフレームワークです。- 顧客価値(Customer Value) ・・・顧客のニーズ・ウォンツ
- 顧客のコスト(Cost) ・・・顧客が支払う時間や費用
- 利便性(Convenience) ・・・顧客が手に入れやすいか
- コミュニケーション(Communication) ・・・顧客とのコミュニケーション
1つ前にご紹介した「4P」が、「良いものを作れば売れる」という「プロダクトアウト」の考え方が主流の時代に生まれたのに対し、こちらの「4C」は、「良いものを作るだけでは売れない、顧客のニーズに合ったものを作る必要がある」という「マーケットイン」の考え方に則って生まれたものとなります。BtoBのマーケティングにとっては、特に重要な考え方といえるでしょう。
4C分析や4P分析については、以下の記事で詳しく解説しています。
- 3.クロスSWOT分析
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ここまでの分析結果を自社の戦略や計画に落とし込みます。SWOTを下記のようにクロスで分析することが、SWOT分析を戦略へ落とし込むポイントです。- Strength(強み)×Opportunity(機会)
- 内部の強みを生かして、外部の機会にどのように参入することができるか。
- Strength(強み)×Threat(脅威)
- 外部の脅威に対して、内部の強みでどう乗り切るか。
- Weakness(弱み)×Opportunity(機会)
- 内部の弱みを把握して、外部の機会をどのように克服していくか。
- Weakness(弱み)×Threat(脅威)
- 外部の脅威に対して、内部の弱みを避けることができるか。
4.クロスSWOT分析の結果を戦略に落とし込む
自社の強みと外部環境の機会のクロス分析から、新規事業の参入による売上アップにつながる戦略を立案します。または、自社の弱みと外部環境の脅威をクロス分析して、事業撤退といったリスク管理戦略などが考えられます。さらに、自社の弱みだけでも、企業や組織の体質改善プランの立案が可能です。
またSWOT分析を行うことは、社内の意識統一にも役立ちます。商品やサービスの開発、製造、販売、アフターフォローまでさまざまな部署が関わる場合、部署間で自社の内部環境や外部環境の認識が異なると、連携が取れず、企業の成長は難しいでしょう。SWOT分析の活用、共有で各部門が一致した見解を持つことで、企業活動に一貫性が生まれます。
【実践】SWOT分析の活用事例
SWOT分析の目的や方法が分かったら実践してみましょう。ここでは、あるメーカーをイメージしてSWOT分析の活用事例をご紹介します。
1.自社のSWOTを洗い出す
- S(Strength)「強み」
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- 安定した販売取引先がある
- 現地法人があり、海外からの原材料の供給ルートが確立している
- 技術力の駆使により、商品開発のスパンが短い
- W(Weakness)「弱み」
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- 社内の情報共有が不十分
- IT化の遅れ
- 提案型営業力の不足
- 為替変動のリスク
- O(Opportunity)「機会」
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- 海外市場の拡大
- 国内でも、新規事業や大型事業の多数計画
- T(Threat)「脅威」
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- 円高の進行
- 規制緩和
- 業界の過当競争
2.戦略の策定
SWOT分析の結果、S(強み)とO(機会)をどのように生かして、W(弱み)とT(脅威)に向き合い、W(弱み)を改善していくかを考えます。
- 強い販売網と安定した供給ルートを生かして、海外の市場を開拓していく
- 新規事業先とタイアップし、短いスパンで新商品開発するプロジェクトを立ち上げる
- 為替リスクの軽減に努め、安定した価格での提供を実現し、他社との差別化を図る
3.経営課題を抽出
- 提案型の人材育成を急務とする
- 社内での情報共有ができるIT化を促進する
このようにSWOT分析を行うことで、「新規開拓」「営業力の不足」「為替リスク」という漠然としていた意識が具体化され、企業戦略へとステップアップするのです。
効果的なSWOT分析を行う4つのポイント
ここでは、SWOT分析を成功させるために押さえておくべきポイントについて解説していきます。
目的を明確にする
なんとなくSWOT分析を行っても、議論がブレてしまう要因となり成果を得ることは難しいでしょう。どのフレームワークを活用する際もいえることですが、まずはしっかり目的を明確にし、チーム全体で共有した上で分析や議論を始めることが大切です。
また分析対象は何か、どのような目標を掲げているのか、対象の顧客属性はだれかなど、前提の条件を整理して、共有しておくことも大切です。
偏った視点にならないよう他部署とも連携して分析する
SWOT分析の後に行うクロスSWOT分析で効果的な戦略を立案するためには、SWOT分析の時点で、広い視野で抜けもれなく項目を洗い出すことが重要となります。
偏った項目ばかりを洗い出してしまうと戦略につながる材料が少なくなってしまいます。そうならないためにも、部門内のメンバーだけでなく、他部署・役職者・異なる立場である人など幅広いメンバーで分析を進めることが成功のポイントとなるでしょう。
「機会」と「強み」が混同しないように注意する
SWOT分析では、「機会(Opportunity)」は外部環境の要因であり、「強み(Strength)」は内部環境の要因です。この2つを混同しないことが重要です。
「市場の成長」は外部環境の変化であり「機会」に該当しますが、「自社の高い技術力で市場の成長を活かせる」という点は「強み」に該当します。自社がコントロールできる要素が「強み」、外部環境の変化が「機会」であることを意識しながら分析することで、より正確な戦略を立案できます。
SWOT分析だけに頼りすぎない
SWOT分析は経営戦略を立てるうえで有効なフレームワークですが、これだけに頼るのは危険です。SWOT分析は現状の把握には優れていますが、定量的なデータ分析や市場調査の代替にはなりません。
また、環境の変化により機会や脅威の要素が短期間で変わることもあるため、継続的な分析が必要です。SWOT分析の結果をもとに、他の分析手法やデータを組み合わせ、より具体的で実行可能な戦略を立案することが重要となります。
おわりに
SWOT分析とは、企業の内部環境と外部環境を考えるマーケティング手法です。企業活動の目的のために何をするべきなのか、経営課題を明らかにしてくれます。
SWOT分析の目的を掲げ、手順に従って多くの意見を出したあと、SWOT分析や企業計画への落とし込みを行ってください。今回ご紹介した、SWOT分析事例で具合的な内容も把握しつつ、その課題に真剣に取り組み、顧客から信頼されるパートナー企業を目指しましょう。