ABMとは「Account Based Marketing(アカウントベースドマーケティング)」の略で、企業を対象にして、戦略的にアプローチをしていくBtoBマーケティングの手法になります。今回の記事ではABMの概要やメリット・デメリット、さらに実施の手順について解説します。
- ▼この記事でわかること
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- ABMの概要
- ABMのメリット・デメリット
- ABM実施の手順
- ABMに役立つツール3選

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Contents
ABMとは?
ABMとは「Account Based Marketing(アカウントベースドマーケティング)」の略で、企業を対象にして適切なアプローチをしていくBtoBマーケティングの手法になります。たとえば、ABMでは下記のような課題を解決することができます。
展示会に出展して大量の名刺を獲得できたけど、お客様の確度が不明確でどうアプローチすればよいかわからない…
既存顧客にアップセル、クロスセルの提案をして効率的に売り上げを上げたいけど、どんな施策が適切かわからない…
上記のような課題に対して、ABMでは適切なマーケティング施策をすることで、アポ、売上につなげるリードを獲得する取り組みになります。
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リードベースドマーケティングや従来のマーケティングとの違い
リードベースドマーケティングとの違い
「ABM」と似た手法で「リードベースドマーケティング」があります。リードベースドマーケティングとは、リードを1単位としてアプローチする営業手法です。ABMとの違いは下記の通りです。
ABM | リードベースドマーケティング | |
---|---|---|
対象 | 企業(アカウント) | リード |
会社規模 | 大企業 | 中小企業 |
指標 | 質 | 量 |
営業手法 | アウトバウンド | インバウンド |
上記のようにABMとリードベースドマーケティングはターゲットや営業アプローチ手法に違いがあります。どちらもBtoBマーケティングの手法ですが、アプローチの仕方が大きく異なります。
リードベースドマーケティングは、個々のリードを獲得し、育成して商談につなげる戦略です。多くの企業や個人に対して幅広くアプローチを行い、興味を持ったリードを徐々に絞り込んでいく手法が一般的です。一方、ABMは特定の企業(アカウント)をターゲットとし、その企業の意思決定者や関係者に対してパーソナライズされたマーケティング活動を行います。
つまり、リードベースドマーケティングは「広く集めて絞り込む」アプローチであるのに対し、ABMは「最初から狙った企業に集中する」アプローチといえます。
デマンドジェネレーションとの違い
デマンドジェネレーションは、潜在的な顧客の関心を引き出し、需要を喚起するマーケティング活動の総称です。コンテンツマーケティングや広告、イベントなどを活用して広範なリードを獲得し、その後の育成につなげることが目的です。
一方、ABMは、すでにターゲットとして選定した企業に対して、より戦略的で個別最適化されたアプローチを行います。デマンドジェネレーションが市場全体に向けて需要を創出する「プル型」の手法であるのに対し、ABMは特定の企業に向けてピンポイントで働きかける「プッシュ型」の手法といえます。
両者を組み合わせることで、広範な見込み客の獲得と特定企業への深いアプローチを両立させることが可能です。
BtoBマーケティングでABMが必要とされる理由
ABMがBtoBマーケティングで必要とされる理由は下記の3つがあります。
- ① アカウントの重要性
- ② ITツールの発展
- ③ 意思決定プロセスの複雑化
それぞれ詳しく見ていきます。
① アカウントの重要性
BtoBビジネスにおいて、昨今アカウントマネジメントの重要性が注目されています。というのも、自社にとって価値のある企業を選定し、個人ではなく、企業自体にアプローチをした方が売上につながりやすいと考えられるからです。
BtoBビジネスの場合、各部門の購買部門が取引の窓口となります。たとえば、既存顧客である企業のA部門と関係が構築されていても、B部門への情報共有・伝達がされず、B部門へのアプローチをした結果、競合他社にコンペ負けしてしまうことがあります。
対象企業の情報を企業全体に共有し、自社サービスの売上につなげることもABMの手法になります。
② ITツールの発展
ITツールの発展もABMが注目されはじめた要因になります。これまでは、ターゲット企業の分類や顧客ニーズに合わせた施策を行うには、大量のデータが必要になるため、うまく運用できる企業は多くはありませんでした。
しかし、近年ではMAツール、CRM、SFAなど、営業活動をサポートするようなツールが多く登場しています。このようなツールと連携して自社にとって有益な顧客を選定し、ABMを行うことでアポ、売上につなげるリードを獲得することが実現できるようになりました。
③ 意思決定プロセスの複雑化
BtoBの購買プロセスでは、複数の意思決定者が関与することが一般的です。特に大企業や組織では、購買部門だけでなく、経営層や現場の担当者など、さまざまな関係者が意思決定に関わります。
ABMでは、ターゲット企業ごとにパーソナライズしたアプローチを行い、各関係者の関心や課題に応じた情報を提供することで、購買決定を促進することができます。
ABMのメリット・デメリット
企業を対象にして、戦略的にアプローチをしていくABMですが、メリット・デメリットもあります。今後、ABMツールを導入を検討している担当者はぜひ、メリット・デメリットを把握しておきましょう。
ABMのメリット
ABMのメリットは下記が挙げられます。
- マーケティング活動の効率化
- ABMは自社にとって価値の高い(売上につながる)顧客を選定するため、アプローチの優先順位が高い顧客にマーケティング施策を注力することができます。
- 効果測定が容易
- 企業単位で効果測定を行うため、メールマーケティングや広告運用など、マーケティング活動の効果を明確に測定することができます。対象企業に対して一点をついたアプローチが可能になり、受注後には効果測定がしやすくなるため、PDCAを高速で回すことができます。
- ROI(投資対効果)の向上
- ABMは、事前にターゲット企業を絞り込んでマーケティングを行うため、無駄な広告費やリソースの浪費を防げます。
リード獲得型の施策と比較して、より高いコンバージョン率が期待でき、ROIの向上につながるでしょう。
- 長期的な関係構築が可能
- ABMは、単発のリード獲得ではなく、ターゲット企業との長期的な関係構築を目的としています。
継続的に価値を提供することで、顧客との信頼関係を強化し、アップセルやクロスセルの機会を生み出すことができます。
- 営業とマーケティングの連携強化
- ABMでは、ターゲット企業に対してマーケティングと営業が一体となってアプローチするため、両部門の連携が強化されます。
営業側が求める質の高いリードをマーケティングが提供できるようになり、営業プロセスの効率化を図ることができます。
ABMのデメリット
ABMにはメリットだけではなく、デメリットもあります。
- 複数商材がない企業は売上につなげにくい
- ABMは、特定の企業に対して長期的な関係を築きながらビジネス機会を拡大していく戦略ですが、単一の商材しかない企業にとっては、その関係性を活かした継続的な売上につなげるのが難しくなります。
たとえば、ターゲット企業への初回の販売が成功したとしても、追加で提案できる商材がなければ、ABMの強みである「アップセル」や「クロスセル」による収益拡大の効果を十分に発揮できません。
そのため、ABMを活用する企業は、複数の商材を組み合わせて提供できるか、もしくは長期的なカスタマーサクセスの仕組みを持っていることが望ましいです。
- ターゲットが大企業でないと売上につなげにくい
- ABMは、特定の企業に対して時間とコストをかけてパーソナライズされたマーケティング施策を行うため、ターゲット企業の規模が小さい場合、投資対効果が見合わなくなる可能性があります。
特に、購買単価が低い中小企業向けの商材では、一社ごとに個別対応を行う負担が大きく、ABMのメリットを十分に活かしにくいといえます。
そのため、ABMは単価が高く、継続的な取引が期待できる大企業向けのビジネスモデルに適しており、ターゲットが中小企業中心のビジネスでは、リードベースのマーケティング手法のほうが効率的な場合があります。
ABM実施の手順
ABMを実施する際の基本的な手順は、以下のような流れになります。
① ターゲット企業の選定
ABMでは、まずアプローチすべき企業(アカウント)を選定することが重要です。売上規模や業界、成約実績、将来的な取引の可能性などの条件を基に、優先度の高い企業をリストアップします。
過去の顧客データやCRM、外部データなどを活用し、ROIの高い企業を選定すると効果的です。
② 企業ごとのリサーチとペルソナ設計
ターゲット企業ごとに、経営課題や業界動向、競合状況などを調査し、最適なアプローチを設計します。また、意思決定者や関与する部門(経営層・現場担当者・購買部門など)のペルソナを明確にし、それぞれに適したコミュニケーション戦略を立てましょう。
③ マーケティングと営業の連携
ABMは、マーケティング部門と営業部門が一体となって進める戦略のため、両部門でターゲット企業ごとの施策や対応方針を共有します。どのようなコンテンツを提供するのか、どのタイミングで営業がアプローチするのかを明確にし、スムーズな連携を図ります。
④ パーソナライズされたコンテンツの作成
次にターゲット企業の課題やニーズに応じて、パーソナライズされたコンテンツを用意します。たとえば、業界別のホワイトペーパー、事例紹介、ターゲット企業向けの特別なウェビナーなどを活用し、関心を引きつけます。また、メールやSNS、広告など、複数のチャネルを組み合わせてアプローチすることが効果的です。
⑤ アプローチの実施とエンゲージメントの強化
マーケティング施策を実施し、ターゲット企業の関係者との接点を増やします。メールマーケティング、ウェビナー、1対1の商談などを通じて、企業内の複数の意思決定者と関係を構築し、段階的に関心度を高めていきます。
⑥ 効果測定と改善
ABMの成果を測定し、PDCAを回しながら施策を最適化します。特定企業ごとの反応率、商談化率、成約率などを分析し、どのアプローチが有効だったのかを評価します。MAツールやCRMを活用し、データを蓄積・分析することで、より効果的なアプローチへと改善することができるでしょう。
このように、ABMはターゲット企業ごとに綿密な戦略を立てて実施するため、通常のマーケティング施策とは異なり、マーケティングと営業の連携やデータの活用が重要なポイントとなります。
ABMを導入する際の課題と解決策
ABMを導入する際、多くの企業が以下のような課題に直面します。それぞれの課題と解決策を詳しく解説します。
リソース不足
ABMはターゲット企業ごとに個別のアプローチを行うため、コンテンツ作成や営業活動に多くの時間と工数がかかります。特に、中小企業ではマーケティングチームのリソースが限られており、ABMに十分な人員を割くのが難しいことがあります。
- 解決策
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- ターゲット企業を厳選する
- リソースが限られている場合は、最も成約可能性が高く、売上への影響が大きい企業に絞って実施する。
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- 既存コンテンツを活用する
- 新規にすべてを作るのではなく、ホワイトペーパーやブログ記事など、既存のコンテンツをターゲットごとに最適化する形で再利用する。
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- MAツールを活用する
- コンテンツ配信や顧客とのコミュニケーションを自動化し、効率的にABMを運用する。
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ターゲットの選定ミス
ABMは特定の企業に注力するため、ターゲット選定が間違っていると、どれだけ労力をかけても成果が出にくくなります。
- 解決策
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- 過去の顧客データを分析する
- 成約実績のある企業の特徴を分析し、ターゲット企業を選定する。
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- 営業チームと連携する
- 営業部門の意見を取り入れ、実際に商談につながりやすい企業を特定する。
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営業とマーケティングの連携不足
ABMは営業とマーケティングが一体となって取り組む戦略ですが、両部門の目標や考え方が異なると、連携がうまくいかず成果が出にくくなります。
- 解決策
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- 共通のKPIを設定する
- マーケティングと営業で共有できるKPIを設定し、目標を統一する。
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- 定期的なミーティングを実施する
- 営業とマーケティングが情報を共有しやすい環境を作る。ターゲット企業の進捗や課題を話し合い、戦略を適宜調整する。
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ABMを成功させるためのポイント
ABMを効果的に運用し、成果につなげるためには、以下のポイントを意識することが重要です。
①ターゲット企業の選定を最適化する
ABMの課題でも解説しましたが、ABMの成功可否は、どの企業をターゲットにするかに大きく左右されます。そこで、以下の基準をもとにターゲット企業を選定すると効果的です。
- LTV(顧客生涯価値)が高い企業:継続的な取引が期待できる企業を優先する。
- 自社の製品やサービスと親和性が高い企業:自社の製品・サービスが解決できる課題を抱えている企業を選ぶ。
- すでに関係性がある企業:過去に商談があったが受注に至らなかった企業や、既存顧客の関連会社など。
②パーソナライズされたアプローチを徹底する
ABMの特徴は、企業ごとに最適なアプローチを行うことにあります。
- カスタマイズされたコンテンツを提供する:業界や企業の課題に合わせたホワイトペーパーやウェビナーを作成する。
- 意思決定者ごとに適切なメッセージを届ける:経営層・現場担当者・IT部門など、それぞれの関心に合わせた情報を提供する。
- One to Oneのコミュニケーションを増やす:パーソナルなメールや個別ミーティングを活用し、関係性を深める。
➂効果測定と継続的な改善を行う
ABMは長期的な取り組みが必要なため、データをもとに継続的に改善していくことが重要です。
- KPIを明確にする:エンゲージメント率、商談化率、成約率など、具体的な指標を設定する。
- ツールを活用してデータを分析する:MAツールやCRMを活用し、どの施策が効果的だったのかを可視化する。
- PDCAサイクルを回す:結果をもとに施策を改善し、より効果的なアプローチを実施する。
ABMに役立つツール3選
ここではABMに活用できる代表的なABMツールを3つご紹介します。
スピーダ(旧FORCAS)
スピーダは、150万社以上の高品質な企業データから顧客分析を行い、受注しやすい顧客を可視化し、効率的に売上を最大化するABMツールです。セールス・マーケティング活動で役立つ企業属性データが多数格納されており、ターゲット企業の絞り込みや、顧客理解の解像度がぐっと高まります。
- 【特徴】
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- 国内150万社の高品質な企業データ
- 独自で定義した560種類の業界分類
- 有価証券報告書やIR情報に基づく、独自の分析軸
- Webサービスの利用・導入状況
- 求人の実施状況
- 特定サービスへの興味・関心を示す、企業の行動データ
▼スピーダの公式サイトはこちら
https://jp.ub-speeda.com/
Marketo
Marketo(マルケト)は全世界で5,000社以上の導入実績があるABMツールです。顧客個人個人の購買行動を分析することで、価値のあるアカウントを獲得することができます。顧客データをMarketoに一元管理できるので、セールスチームとの連携・共有がスムーズになります。
- 【特徴】
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- 全世界5,000社以上での導入実績
- ユーザーの複雑な購買体験を分析できる
- AIによる「パーソナライゼーション」「セグメンテーション」
- 高度なカスタマージャーニー分析によりROIの最大化が可能
▼Marketoの公式サイトはこちら
https://business.adobe.com/jp/products/marketo/adobe-marketo.html
uSonar
uSonarは国内最大「820万件」の企業データで「貴社が今提案すべき相手」を可視化できるABMツールです。820万件の法人企業データベースLBCで受注につながる営業リストを作成できるので、効率的なアプローチが可能になります。また、対象企業の導入サービス、Webサイト来訪状況、取引安全性を考慮したリスト抽出が可能です。
- 【特徴】
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- 820万件の法人企業データベース
- 高精度なクレンジング・名寄せを実現
- 顧客データをLBCと統合することで、優先アプローチ先を可視化
- 名刺情報管理で受注確度の高い顧客の見える化
▼uSonarの公式サイトはこちら
https://usonar.co.jp/
ABMとMAツール(マーケティングオートメーション)の関係
ABMを効率的に実施するには、MAツール(マーケティングオートメーション)の活用も効果的です。MAツールを活用することで、以下のようなメリットがあります。
ターゲット企業ごとのデータ管理が容易になる
MAツールを使うことで、ターゲット企業ごとの行動履歴や関心度を一元管理できます。メールの開封率やWebサイトの閲覧履歴を分析し、適切なタイミングでアプローチできるようになります。
パーソナライズされたコミュニケーションを自動化できる
MAツールを活用すれば、ターゲット企業ごとに最適なコンテンツを自動配信できます。たとえば、
- 特定の業界向けにカスタマイズしたメールを配信する
- Web上の行動に基づいて、適切なタイミングでフォローアップする
- 顧客の興味関心に応じて、コンテンツを動的に表示する
などを自動化することができます。
ABMの効果測定がしやすくなる
MAツールを活用することで、どの施策が効果的だったのかをデータで確認できます。たとえば、
- ターゲット企業ごとのエンゲージメント状況を可視化する
- どのコンテンツが意思決定者に響いたのかを分析する
- 商談や成約につながった施策を特定し、最適化する
ことができます。
このように、MAツールはABMの実施を効率化し、より精度の高いアプローチを可能にします。ABMを本格的に導入する場合は、MAツールとCRMの連携も検討するとよいでしょう。MAツールについては、以下の記事をご覧ください。
まとめ
今回はBtoBマーケティングでABMが必要とされる理由やメリット・デメリット、実施の手順について解説しました。
ABMは企業単位で戦略的にアプローチをしていくBtoBマーケティングの手法で、自社にとって価値のある企業を選定し、アプローチすることで売上につなげやすくなります。これからABMでの施策を考えている担当者の方は、ぜひ今回の記事を参考にしていただき、効果的、効率的なマーケティング施策を実行していきましょう。