BANTは商談の際に使われるフレームワークで、BtoBにおいてはBANTが揃うことで成約の可能性を高めることができるため、確認が必須の項目となります。
この記事では、営業担当者向けにヒアリングの成果を最大化させるBANT活用のコツや概要、活用時の注意点について詳しく解説していきます。

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- ▼この記事で分かること
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- BANTの項目
- BANTを活用するメリット
- BANT情報を聞き出すテクニック
- BANT活用の際の注意点
Contents
BANTとは?
BANTとはBudget(予算)・Authority(決済権)・Needs(ニーズ・必要性)・Time frame(導入時期)の4つの頭文字を取ったもので、BtoBビジネスにおいて商談時などに使われるヒアリングのフレームワークです。
BANT条件とも呼ばれ、それぞれを全てクリアすることで受注確度が高まるとされています。ここでは、それぞれの項目について詳しく見ていきましょう。
Budget(予算)
Budgetとは製品やサービスを導入するための予算の有無、もしくは想定している予算です。予算に応じて提案内容が変わることもあるため、商談が始まったら早い段階で顧客に確認しておくべき項目となります。
Authority(決裁権)
Authorityは、商品の購入を最終的に決定する決裁者・決裁権です。商談は、決裁権のある相手に対して行うことが迅速なクロージングへとつながるため、決裁権者の確認も重要な要素となります。
Needs(ニーズ)
Needsでは顧客の抱えている課題の有無や、課題がある場合には自社の商品やサービスを通してどのように解決したいと考えているのか確認しておきます。
このとき、社内全体でニーズが明確になっているのか、担当部署だけのニーズなのかによっても優先度が異なります。
Time frame(導入時期)
Time frameは商品やサービスの導入時期です。いつ購入したいのか、いつまでに必要なのかヒアリングしておきましょう。
受注が決まっていない場合でも、具体的な導入時期が決まっている場合とそうでない場合で優先度合いを判断することができます。
BANTが揃わないと起こること
この4つの要素のいずれかが揃わない場合、商談や営業活動にはいくつかの課題やリスクが生じる可能性があります。ここでは、BANT情報を揃えることができない時、商談はどのようになってしまうのかを確認しておきましょう。
Budgetが欠けている場合
たとえば、商品のニーズがあり決裁者に購入の意思があっても、予算がなければ受注に至る可能性は極めて低いでしょう。さらに、導入時期が明確であったとしても予算調達の目途が立っていなければ、商談が先延ばしになってしまいます。
Authorityが欠けている場合
商談相手となる担当者に商品の購入意思があり、予算内の提案を行うことができても、最終的な決裁権を持つ上司が却下すれば受注にはつながりません。そうならないためにも、ヒアリングで決裁者を確認し、決裁者も含めた商談を提案するなど、決裁者へ直接アプローチを行うことが重要です。
Needsが欠けている場合
予算も導入時期も明確になっており、商談相手が決裁者であったとしても自社の商品が顧客のニーズに合っていない場合は、成約には至らないでしょう。そうならないためにも、顧客のニーズを把握し、そのニーズを踏まえた提案を行うことが重要です。
Timeframeが欠けている場合
予算もニーズも把握できており、決裁者と商談を行っている場合でも、導入時期が明確でない場合は、導入の遅れだけでなく導入へのモチベーション低下にもつながり、商談を先延ばしにされてしまうことも考えられます。
全体的な影響
このように、BANTのいずれかの要素が欠けると、商談の成立確率が著しく低下します。これにより、営業プロセスの効率が悪化し、時間やリソースの無駄が発生するでしょう。
また、無理に進めようとすると、顧客との関係性が悪化するリスクもあります。そのため、BANTの各要素を適切に確認し、不足があれば早期に対応策を講じることが重要です。
BANTを活用するメリット
BANTを活用することで受注確度が高まると解説しましたが、ここでは、活用することで受注確度が高まる理由について詳しく解説していきます。
営業の優先順位が明確になる
BANT情報を揃えることができると、その結果により営業アプローチを行うべき優先順位を決めやすくなります。これは、BANTのうちのNeeds(ニーズ)とTime frame(導入時期)で判断することができます。
たとえば、すでに社内でニーズが決まっている場合と今の時点では部署内でのニーズのみの場合では優先度合いが異なります。また導入時期が未定の企業と比べ、導入時期が決まっている場合にはアプローチの優先順位は高くなるでしょう。
チームでの情報共有ができる
営業活動において、チーム内で情報をスムーズに共有することは、効率的な商談管理や成約率向上のために欠かせません。BANTを情報を活用することで、各商談を同じ基準で評価し記録することが可能になります。この一貫性が、チームでの情報共有をより容易にする主な理由です。
また、BANTに基づく情報共有は、営業チームと他部門との連携にも役立ちます。たとえば、マーケティング部門や製品開発部門がBANT情報を参照することで、顧客のニーズや購入タイミングに応じた施策を適切に立案できるようになります。
このように、BANTを活用することで得られる一貫性は、チーム全体の連携を強化し、結果的に組織全体のパフォーマンス向上につながります。
顧客に合わせた提案がしやすくなる
成約率を高めるためには、自社本位の提案ではなく見込み顧客の立場に立って、ニーズや課題に合わせた提案を行うことが最も重要となります。
BANT情報が揃うと、このニーズや課題を的確に知ることができるため、見込み顧客にとって必要な提案をしやすくなるのです。反対にBANTが揃っていないと見込み顧客のニーズに沿った提案を行うことが難しくなるでしょう。
営業のボトルネックを発見できる
BANT情報を得ることは、営業でボトルネックとなっている部分を発見しやすくなります。たとえば、これまでの商談で成約につながったBANT情報と成約にはつながらなかった際のBANT情報を比較することで、成約に至らなかった原因となるボトルネックを洗い出すことができます。
このボトルネックとなっている箇所が明確になれば、今後の商談で解消するための対策を立てることができるようになるでしょう。
また、BANT情報を揃えるには営業担当者のテクニックが必要となる場面もあるでしょう。この分析により担当者の苦手とする部分を洗い出すことができれば、チーム全体としての成約率を引き上げることにもつながります。
BANT情報を揃えるためのテクニック
ここでは、BANTを聞き出すために意識しておくべきポイントをそれぞれの項目ごとにご紹介します。
Budgetを聞き出すコツ
- ・予算を先に把握する
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顧客の予算規模は、今後の営業活動体制や進め方に大きく影響します。そのため、なるべく早い段階で予算を把握しておきましょう。予算が明確になることで、その後の商談の進め方や、納品までのプロセスを検討するなど、事前に対策を考えることができるでしょう。
このとき顧客には、「ご希望の予算に合わせて最適な提案をさせていただくため」と伝えることが効果的です。- 質問例
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- 「これ以上検討できない、という価格はどのくらいですか?」
- 「現在お考えの価格帯について、大まかで結構ですので教えていただけますか?」
- ・具体的な金額を把握する
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予算をヒアリングする際には、できるだけ定量的に把握できるようにしましょう。
しかし具体的な予算が決まっていなかったり、回答できないこともあります。その場合は、規模感や過去の実績などを聞いてみると良いでしょう。- 質問例
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- 「具体的にご予算の範囲として、どのくらいをお考えですか?」
- 「たとえば、◯万円から△万円の間でご検討されていますか?」
- 「直近でご検討中の他の案件と比較して、予算感は似ていますか?」
- ・決裁ルートを把握する
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ここでは、いきなり決裁者が誰なのかを聞くのではなく、購入に至るまでにどのような稟議フローを辿るのか聞き出しましょう。
BtoBの場合、購入決定に至るまで様々な担当者を経ることが多いでしょう。決裁者が誰かわからなくても、稟議の流れを把握しておくことで最終決裁権者を推測することができます。- 質問例
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- 「今回のご決定にあたっては、どなたが最終的な判断をされる形になりますか?」
- 「この件に関して、他に関わる方や承認が必要な方はどなたになりますか?」
- 「通常、このようなご提案を進める際には、どのようなプロセスで進むことが多いですか?」
- ・潜在的なニーズを引き出す
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ここでは、顧客の課題やニーズを引き出していきます。しかし、顧客自身がまだ課題やニーズに気づいていないことも多いでしょう。
顕在化された課題やニーズがない場合でも、顧客の状況や、困っていることを聞き出すことで、顧客自身がまだ気づいていない潜在的なニーズを発見できることもあります。- 質問例
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- 「現在の課題で、特に解決したいと感じていることは何ですか?」
- 「もし今の方法でうまくいかないとしたら、どのような問題が発生しそうですか?」
- 「今は目立っていない課題でも、将来的に解決しておきたいと思う点はありますか?」
- ・導入プロセスを把握する
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ここでは、「いつ導入するか」だけでなく、導入までのプロセスを把握することが大切です。顧客が製品やサービスを導入する際に必要な手順を具体的に確認することで、自然とスケジュール感を掴むことができます。
このプロセスの中で、決定時期や実施時期についても具体的な回答を得られる可能性が高まるでしょう。- 質問例
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- 「過去に似たような製品やサービスを導入された際、どのようなステップを踏まれましたか?」
- 「今回のご提案が進んだ場合、具体的にはどのような準備や手続きが必要になりますか?」
- 「導入までのスケジュールや体制について、現時点でイメージされていることを教えていただけますか?」
- ・スケジュールはこちらから提案する
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早い段階では具体的に決まっていないことも多い導入時期については、こちら側からスケジュールの提案を行うことも効果的です。
検討、承認などの具体的なスケジュールを提案していくことで、導入時期を定めていくことができます。- 質問例
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- 「こちらから少し先のスケジュールを提案させていただいてもよろしいですか?」
- 「◯月中に具体的なご検討を進めるという形はいかがでしょうか?」
- 「ご都合に合わせてですが、◯月から△月の間にスタートするという案は適切でしょうか?」
- B(Budget):予算
- A(Authority):決裁権者
- N(Need):ニーズ
- T(Timing):タイミング
- C(Competition):競合他社
- B(Budget):予算
- A(Authority):決裁権者
- N(Need):ニーズ
- T(Timing):タイミング
- C(Competition):競合
- H(Human resource):人材(顧客側でプロジェクトに関わる担当者や必要なスキルを持つ人材)
- M(Metrics):指標
- E(Economic Buyer):決裁者
- D(Decision Criteria):決定基準
- D(Decision Process):意思決定プロセス
- I(Identify Pain):課題(顧客が抱える問題やニーズ)
- C(Champion):擁護者(顧客内であなたの提案を支持する人物)
- S(Situation):状況質問(顧客の現状に関する質問)
例:「現在のシステムでどのような課題がありますか?」 - P(Problem):問題質問(顧客が抱える問題に関する質問)
例:「その課題は業務にどのような影響を与えていますか?」 - I(Implication):示唆質問(問題が続いた場合の影響を探る質問)
例:「この問題が解決しない場合、今後どうなりそうですか?」 - N(Need-Payoff):解決質問(解決策を提示し顧客が感じる価値を引き出す質問)
例:「この問題が解決すれば、どのようなメリットがありますか?」
Authorityを引き出すコツ
Needsを引き出すコツ
Timeframeを引き出すコツ
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これらの質問例を使うことで、BANT要素を自然に引き出しながら、顧客との信頼関係を深められる可能性が高まります。
BANTを活用する際の注意点
ここでは、BANTを活用する際の注意点を詳しく説明します。
顧客との信頼関係を優先する
BANTは顧客の状況を把握するための便利なフレームワークですが、質問が一方的になると、顧客が「尋問されている」と感じてしまうリスクがあります。
ヒアリングはこちらの話をするのではなく、顧客の話を聞くことに徹しましょう。質問は対話の中で自然に行い、信頼関係を築きながら情報を引き出すことを意識することが重要です。
BANTは商談で直接確認する
BANT情報を揃えるには、SFAやCRMの情報だけでBANTを決定するのではなく、商談で直接顧客に確認することが重要です。予算、決裁権者、ニーズ、タイミングといった要素を顧客との対話の中で確認することで、リアルタイムな情報を得ることができます。
ただし、これらの質問を一方的に押し付けることは避け、あくまで自然な会話の中で情報を引き出すことが大切です。
海外で生まれたフレームワークであることも考慮する
BANTは元々海外で生まれたフレームワークであり、その背景や文化的な違いを理解して活用することが大切です。たとえば、欧米では営業活動において予算や決裁権者についてオープンに話すことが一般的ですが、国内企業ではこれらの要素を尋ねることが難しい場合があります。
そのため、BANTを使用する際には、文化的な違いに配慮し、顧客との信頼関係を築きながら質問を行うことが重要です。
BANT情報だけに頼りすぎない
BANTを使う際は、BANTだけに頼りすぎないことも大切です。BANT条件が全て揃っている場合でも突然変化することも考えられます。BANTはあくまで顧客情報を把握するための基本手段として、臨機応変な営業活動を行うことが重要です。
また反対に、BANT条件が揃っていないからといって顧客のフォローを辞めてしまっている間にBANTが揃い、いつのまにか競合から商品を購入していたということもあります。
初めから全ての条件が揃っていることは少ないため、条件が揃っていないからといって商談を諦めるのではなく、まずは、クリアできていない条件は何か明確にし、どのようにすれば条件を揃えることができるのか顧客の意思を踏まえ、模索していくことが重要となります。
BANTだけじゃない!その他のフレームワークとの連携
BANT以外にも営業や商談を進める際に役立つさまざまなフレームワークがあります。以下はその代表的なものです。
BANTC
BANTCは、BANTに「C(Competition:競合)」を加えたフレームワークです。この追加要素は、競合他社の存在を意識し、商談を有利に進めるための情報を把握することに役立ちます。
競合他社の影響や顧客が選択肢をどのように評価しているかを把握することで、自社の提案が競争優位に立つための戦略を立てることができます。
BANTCH
BANTCHは、さらに「C(Competition:競合)」に加えて「H(Human resource:人材)」を加えたフレームワークです。顧客の過去の購買履歴や過去のビジネスに関する情報を含めることで、より具体的な営業戦略を練ることが可能です。
「Human resource」の要素を加えることで、顧客がプロジェクトを実行するためにどのような人材を必要としているか、またその人材がどの段階で関与するのかを理解することができ、よりターゲットを絞った提案が可能になります。
MEDDIC
MEDDICは、高度な営業プロセスに特化したフレームワークで、特に複雑で長期的な商談に有効です。以下の6つの要素で商談の進捗を管理します。
MEDDICは、商談の各ステップで必要な情報を明確にし、リスクを最小限に抑えながら商談を進めるために有効です。
SPIN話法
SPIN話法は、特に顧客との会話を通じて情報を引き出すためのフレームワークです。SPINは以下の4つの質問タイプに基づいています。
SPIN話法は、顧客のニーズを深掘りし、課題解決の重要性を自覚させることで、商談を前進させるのに有効です。
おわりに:ヒアリングでは、話すことより聞くことが大前提!
ヒアリングでは、顧客の立場に立ち、顧客心理に寄り添って話を進めることが大前提です。まだ顧客との信頼関係ができていない状態で、BANT条件を聞き出そうとすることで相手に失礼な印象を与えてしまうこともあります。
そうならないためにも、まずはしっかりと顧客の話に耳を傾け、その場の雰囲気を壊すことのないよう、慎重に進めていくことを心がけましょう。
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