アップセル・クロスセルとは?違いやメリットとそれぞれの手段

マーケティング全般

アップセル・クロスセルとは?違いやメリットとそれぞれの手段

アップセルとクロスセルは顧客単価を高め、LTV(顧客生涯価値)の向上を目指す営業手法です。この記事では、それぞれの手段と成功させるポイントについて詳しく解説します。

▼この記事でわかること
  • アップセルやクロスセルの概要と手段
  • アップセルやクロスセルを実施するメリットとデメリット
  • アップセルやクロスセルを成功させる4つのポイント

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アップセルとは?

アップセルとは、顧客がこれまでに購入した商品や購入検討している商品よりも、より高価な商品やサービスを提案し、購入してもらうことを目的とした手法です。アップセルにより、顧客単価を高め、LTV(顧客生涯価値)の向上を目指します。

アップセルしてもらうためには、商品やサービスに複数のプランを用意し、より価値の高い上位商品を選んでもらう必要があります。

【アップセルの手段】

・類似製品の提案
アップセルでは、上位品へのアップグレードが顧客にとってお得であることを伝えることがポイントです。そこで検討している商品やサービスの類似品の中で、機能面や、スペックの高い上位品を紹介します。
このとき、あくまでも顧客のニーズに沿って提案を行うことが重要となります。顧客の求めていない内容での提案は、不信感につながることもあるため注意が必要です。
・割引キャンペーンの紹介
無料トライアルや割引キャンペーンを行うことで上位品に興味を持ってもらうきっかけを作ることもアップセルを成功させるポイントです。
顧客が提案された上位品に興味をもっており、価格がネックになっている場合に効果的な方法となります。
・無料プランから有料プランへアップグレード提案
無料プランから有料プランにアップグレードしてもらうこともアップセルの手段の1つです。有料プランにすることで、より便利なサービスを受けられることをアピールすることがポイントです。
また、月額利用の有料プランを年払い契約に変更してもらうことで、長期的な契約にしてもらうことも顧客単価の向上につながります。

クロスセルとは?

クロスセルとは、すでに購入済みまたは購入検討中の商品に加え、関連する商品やサービスを同時購入してもらうことで顧客単価を高める手法です。自社でセット購入の多いパターンを紹介するなどし、クロスセルを目指します。

またECサイトなどで、「この商品を購入した方は、この商品も購入しています」と表示されるのはこのクロスセルを目的としています。

【クロスセルの手段】

・追加機能を提案
クロスセルは、今まとめて購入することで顧客の課題解決につながることを伝えましょう。たとえば、ソフトウェアのオプションの提案などです。オプション追加による機能性の向上や汎用性の向上を訴求することで、クロスセルを促しましょう。
・バンドル販売の実施
まとめ買いキャンペーンや関連商品のセット販売もクロスセルの手段です。まとめて購入することで割引になるお得感を訴求したり、同時に関連商品を購入してもらうことで顧客単価の向上を目指します。

アップセルとクロスセルの違い

アップセルとクロスセルはどちらも顧客単価の向上を目的とした手法ですが、両者の違いは、アプローチの仕方です。

アップセルは、上位商品やプランを購入してもらい顧客単価を上げるのに対し、クロスセルは関連商品を同時購入してもらうことで顧客単価の向上を目指します。

アップセルとクロスセルが注目される理由

企業の成長には新規顧客開拓が欠かせませんが、多くの業界が飽和状態になっていることから、新規顧客開拓が難しくなってきています。

そこで、既存顧客からの売上を最大化し、LTVを向上させることが重要とされているのです。このような市場の変化に伴い、アップセルやクロスセルといった営業手法が注目されるようになりました。

ダウンセルが有効な場合も

ダウンセルとは、顧客が購入を検討している商品やサービスが高額である、または予算に合わない場合に、より低価格な選択肢を提案する販売手法です。この手法は、アップセルやクロスセルと異なり、顧客が最初に意図していた商品よりも安価なオプションを提示することが特徴です。

ダウンセルの目的は、顧客の離脱を防ぎつつ、購入に至る可能性を高めることにあります。たとえば、高機能なパソコンを販売している状況で、顧客がその価格に躊躇している場合、ダウンセルとして、性能を少し抑えたモデルや旧型モデルを提案することがあります。これにより、顧客は「買えない」から「買いやすい」に意識が変わり、購入につながる可能性が高まります。

アップセルやクロスセルは顧客単価を上げることを目的としていますが、顧客が価格に敏感である場合や、予算的に厳しい場合には効果が薄く、むしろ圧迫感を与えてしまうこともあります。そのような状況では、ダウンセルがより有効です。ダウンセルは顧客の満足度を高め、結果として長期的な関係構築やリピート購入につながる可能性が考えられます。

アップセルやクロスセルを実施するメリットとデメリット

ここでは、アップセル・クロスセルを目指すことで得られるメリットと知っておきたい注意点について解説していきます。

メリット

・利益率の向上
アップセルとクロスセルはどちらも利益率の向上につながります。新規顧客を開拓する場合は、既存顧客への販売に比べおよそ5倍のコストがかかるとされています。アップセルとクロスセルはどちらも既存顧客の売上を向上させる手法であり、コストが低いことからも利益率が高いといえます。
・顧客満足度の向上
アップセルとクロスセルは、顧客のニーズを満たすことで成立する手法です。アップセルやクロスセルにより、顧客はより良い商品やサービスを知ることとなり、顧客満足度の向上につながります。
また、顧客満足度の向上は今後さらなるリピート購入につながる可能性も高まります。リピート購入は経営の安定化にとって無くてはならない要素です。
・業務の効率化
アップセルやクロスセルを実施することは、業務の効率化にもつながります。まず、上述したように既存顧客に対して提案を行うため、新規顧客獲得にかかるコストを抑えつつ、追加の売上を得ることができます。また、関連商品やサービスを一度に提案することで、顧客へのアプローチ回数を減らし、効率的に販売活動を行えます。
さらに、顧客が購入する商品やサービスのデータを活用することで、提案内容がよりパーソナライズされ、効果的にターゲットを絞った販売が可能となり、業務全体の生産性向上にもつながるでしょう。

デメリット

・顧客の負担感や不満を引き起こす場合も
アップセルやクロスセルを過剰に行うと、顧客は強引なセールスと感じてしまうことがあります。特に、顧客がもともと意図していた購入金額を大きく超える商品やサービスを提案されると、圧迫感を覚えたり、不信感を抱いたりすることがあるでしょう。
このような体験は、顧客満足度の低下や離脱につながるリスクも考えられるため、注意が必要です。
・購入意欲を損なう可能性も
アップセルやクロスセルによって提案された商品の価格が高すぎたり、関連性が低かったりすると、顧客が元々購入しようとしていた商品自体への関心を失う場合があります。
「売り込まれてる」と感じた顧客が、購入を完全にやめてしまうこともあるため、適切な内容やタイミングでの提案が求められます。

アップセル・クロスセルを成功させる4つのポイント

アップセルやクロスセルを成功させるために意識しておくべきポイントについて解説していきます。

①顧客視点に立って提案する

アップセルやクロスセルを成功させるには、顧客視点に立ち、顧客の利益を最優先に考えることが大切です。
顧客のニーズや要望に合わせた提案を行うことができれば、顧客は押し売り感や営業感を感じず、アップセルやクロスセルの成功率が高まるでしょう。

②NPSの活用で顧客ロイヤルティを見極める

アップセルやクロスセルを成功させるには、顧客ロイヤリティの高い顧客に対してアプローチを行うことが効果的です。

まず顧客ロイヤリティとは、顧客が自社や自社商品に対して感じる「愛着」や「信頼」のことで、自社への強い愛着や信頼から、継続的な購入が期待できる顧客を指します。この顧客ロイヤリティの高い顧客はアップセル・クロスセルの成功率が高く優先してアプローチすべき顧客といえます。

このときNPSを活用することで、顧客ロイヤルティを効果的に見極めることができます。NPSとは、顧客が商品やサービスを他人に推奨する意欲を測定する指標で、顧客満足度やロイヤルティを評価するために広く用いられています。顧客を推奨者、批判者、中立者に分類することで、ロイヤルティの高い層つまり推奨者がどの程度いるかを把握でき、ブランドへの信頼や満足度を定量的に評価可能です。

さらに、批判者から得られる低評価の理由を分析することで、改善点を明確にし、顧客体験の向上につなげられます。この結果、ロイヤルティの向上を図る施策を効率的に実行でき、顧客との長期的な関係構築が可能となります。

➂顧客との接触頻度やタイミングを考える

アップセルやクロスセルを成功させるためには、購入回数や購入日時などに応じて顧客ごとにアプローチのタイミングを変える必要があります。誤ったタイミングでのアプローチは顧客に不信感や不快感を与えてしまうこともあるので注意が必要です。

たとえばアップセルの場合、顧客が商品を購入する意思が固まったタイミングで提案を行いましょう。またクロスセルは、購入が決まった直後に関連商品の提案を行うことが効果的です。

④カスタマーサクセスを導入する

アップセルやクロスセルを成功させるためには、カスタマーサクセスの導入が効果的です。カスタマーサクセスとは、顧客が商品やサービスを通じて目標を達成し、最大限の価値を得られるよう支援する取り組みです。これにより、顧客が抱える課題やニーズを深く理解し、適切なタイミングで最適な提案が可能になります。

たとえば、顧客の利用状況を分析し、現状のプランでは不足している機能を補う上位プランを提案することで、アップセルが自然に実現します。また、顧客がより快適に商品を利用できる関連商品を紹介することで、クロスセルの効果が高まります。

これらの提案が顧客の成功体験をサポートするものであれば、購入への抵抗感は低下し、長期的な信頼関係が構築されるでしょう。

アップセル・クロスセルに成功している企業事例

アップセル・クロスセルに成功している企業の代表例として、Amazonが挙げられます。Amazonは、顧客データを高度に活用し、個々の購入履歴や閲覧履歴に基づいて適切な商品を提案することで、アップセルとクロスセルを実現しています。

たとえば、顧客が家電製品を購入しようとする際、「この商品を買った人はこんな商品も購入しています」として関連アクセサリを提案するのはクロスセルの一例です。また、同じカテゴリーでより高性能な製品を「おすすめ」として表示することで、アップセルも狙っています。

これらの戦略は、Amazonのパーソナライズされた顧客体験を提供する能力に裏打ちされており、顧客満足度と売上を同時に向上させています。

おわりに:アップセルやクロスセルの成功は顧客をよく理解することが重要

アップセルとクロスセルはビジネスの成長と顧客満足度を向上させるために欠かせない取り組みです。どちらも売上や利益を増やすだけでなく、顧客との関係を強化するためにも重要な手法といえます。顧客に適切な商品やサービスを提案することで、顧客の信頼を獲得し、顧客ロイヤルティを高めることができます。そのためにも、顧客心理をよく理解することが重要といえるでしょう。

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