マーケティングオートメーションとABMは何が違う?具体的な取り組み

マーケティングオートメーション

マーケティングオートメーションとABMは何が違う?具体的な取り組み

ABMはCRM(顧客関係管理)やMA(マーケティングオートメーション)と親和性が高く注目を集めています。ABMとMAの違いや共通点、ABMにより、どのようなことが企業としてできるようになるのかを解説します。

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デジタル化の加速で再注目されるABM

2000年代初め頃に提唱されていた『ABM』という考え方が、再び注目されるようになってきました。その理由はCRM(顧客関係管理)やMA(マーケティングオートメーション)を導入する企業が増えてきたためです。

ABMとはどのようなものなのでしょうか。ABMの概要や歴史、マーケティングオートメーションとの違いについて、まずは見ていきましょう。

ABMとは? 基本的な考え方とパレートの法則

ABMとは『Account Based Marketing』(アカウント・ベースド・マーケティング)の頭文字を並べた言葉です。自社にとって価値の高い顧客を選別し、顧客のニーズや評価に合わせた最適なアプローチをとることを指します。

従来の営業のように、多数の顧客にアプローチしていくのではなく、ターゲットになる顧客を明確に定義するのが特徴です。対象となる企業に個別にアプローチをしていく手法であるため、個人向けではなく、BtoB戦略にフォーカスしています。

ABMの歴史は古い

ABMは2003年、イギリスの『ITSMA』というマーケティングコンサルティング会社が提唱したのが始まりといわれています。ITSMAでは、ABMを『企業が持つ重要なクライアントに対し、持続的な成長性と戦略を提供するもの』と説明しています。

この考え方が提唱された当時は、成果を出すためのデータがそろってはおらず、またABMを活かせるようなマーケットの態勢が整っていませんでした。ですが、2014年頃から、MAやCRMの台頭と共に、再び関心を集めるようになってきました。

なぜ今、ABMが注目されているのか

上記のステップを見ると、マーケティングの方法としては決して新しいものではないということに気がつくでしょう。では、なぜ今になって注目を集めているのでしょうか。

その大きな要因の1つと言われているのが、MA(マーケティングオートメーション)やSFA(営業支援)といったツールの台頭です。

ちょっとおさらい。マーケティングオートメーションとは?
マーケティングオートメーションとは、「新規商談獲得におけるマーケティング活動を自動化し、効率的な営業活動を支援する」こと、もしくはそれを実現するツールのことを指します。
新規商談を獲得する際には、自社の見込み顧客に対して継続的にコミュニケーションを取り続け、一人ひとり異なる興味・関心内容に即したコンテンツを提供し、ニーズが顕在化したタイミングを逃さずに営業アプローチすることが重要ですが、これら一連の業務を手動で行おうとすると、莫大な工数が生じてしまいます。
そこで、「見込み顧客に対する適切なコンテンツ提供」「ニーズが顕在化したタイミングのキャッチアップ」を自動化できるツールとして、マーケティングオートメーションツールが誕生したのです。

これまでは、社内に点在する情報の集約が十分とは言えず、結果として最適なアプローチが行えない現実がありました。しかし、これらのツールが充実してきた現在では、営業によって獲得した各種の情報を一元管理できるだけでなく、データの分析や作業の自動化など、アカウントベースドマーケティングに適した環境が整いつつあります。

つまり、MAツールなどを効率的に活用することが、BtoB市場でアカウントベースドマーケティングを成功させる方法とも言えるのです。

マーケティングオートメーションとの違い

マーケティングオートメーション(MA)とは、顧客情報の収集やアプローチを自動化するツールのことです。顧客の購買やWebサイトへの訪問履歴などから、顧客のスコアリングや分析を行って、興味関心・傾向を可視化します。

一方、ABMは自社に対して興味関心が高く、また自社にとって価値の高いターゲットを選出して、個別にアプローチを行うことです。

MAの場合、不特定多数の企業に対し効率的にアプローチをしていくのに対し、ABMは特定企業に重点を置いてアプローチを行うという違いがあります。しかしながら、MAもABMも優良顧客を抽出するという点では一致していて、組み合わせて運用されることも多くなっています。

ABMの強み

ABMでのマーケティング戦略にはどのような強みがあるのでしょうか。他のマーケティング手法にはない、ABM独自の強みに注目してみましょう。

無駄を排除できる

不特定多数のターゲットに対してアプローチする場合、受注確度の低いターゲットに対してもアプローチを行うことになります。成果につながりにくく、かけるコストが無駄になってしまう可能性が大きいでしょう。

しかし、ABMによってあらかじめ受注確度の高い企業を選定してアプローチすれば、受注確度の低いターゲットを最初から除外できるため、無駄なコストや時間が削減できます。

売り上げにつながる顧客に注力できる

MAの場合、ターゲットの興味関心や受注確度などの段階に分別してアプローチしますが、ABMでは最初から自社にとって有力なターゲットに絞っているため、売り上げにつながりやすい顧客に対し重点的にリソースを注ぐことができます。

また、ABMではターゲットを絞ってより深く分析していくため、よりターゲットにとって価値の高いコンテンツを配信できます。結果、エンゲージメントや売り上げの向上につながりやすいのです。

営業・マーケティングの連携が図りやすい

ABMは営業部門とマーケティング部門の連携が図りやすいマーケティング手法だと言われています。企業の営業部門とマーケティング部門は、本来は密接な関係がありながらも、それぞれが独立してしまっていることが少なくありません。しかし、ABMを行おうとした場合、独立していてはうまく進めることは難しいでしょう。

両部門ともに、ターゲット企業の顧客志向を基本とした展開を意識することになるため、情報共有や実際の施策での協力など、密接に連携して進めていく必要があります。連携を取らざるを得ない環境が互いの理解を深め、結果として、企業として大きなメリットが生まれるのです。

具体的にどのような取り組みをするのか

ABMの施策を行う際に、企業としてどのようなことを行うのでしょうか。具体的な取り組み方について解説します。

企業プロファイル、キーパーソンの理解

まずは、ABMのターゲットとなる企業をリストアップすることから始まります。すでに自社の顧客となっている企業や、その企業に類似する企業情報をプロファイルしていくのです。

次に、ピックアップした企業の中で、重要となるキーパーソンは誰なのかを探っていきます。自社のサービスや商品を必要としているのは、対象企業の中で、どの部署にいる、どういった人材なのかを抽出していきます。

適したチャネルでアプローチ

ターゲットとなる企業とキーパーソンがピックアップできたら、次はアプローチをかけていきます。このとき重要なのは、最適なチャネルはどれかを探ることです。

ユーザーのプロフィールやトラッキング情報を高い精度で追跡できる『Facebook広告』やIP情報で配信先を限定する『企業ターゲティング広告』が有効でしょう。逆に、不特定多数に表示する広告は不向きです。

メールやSNSをはじめさまざまなアプローチ方法がありますが、成果を挙げるためにも、ターゲットに適した方法を選択しましょう。

施策の効果測定と改善

アプローチを実施したら、成約率や受注率、目標数値などの効果測定を行い、当初の予定を達成できたのかを計測しましょう。

達成できなかった場合は何が問題となっているのかを、達成した場合、何が良かったのかを考え、再現性を追求します。次の施策は改善点を踏まえたうえで立案し、施策の効果を高めていくことが大切です。

ABMで成果を挙げるために

ABMが再注目されるようになった背景としては、デジタルツールとの融合、関連部門の連携が取りやすくなっていることなどが挙げられます。これらの点を踏まえたうえで、ABMで成果を挙げるためには次のポイントを意識するようにしましょう。

各部門で同じ方向を向く

ABMやMAを導入する際に課題となるのは、各部門の足並みがそろわないことです。特に営業は、自身の持っているスキルや印象から顧客評価をしがちですが、マーケティング部門がピックアップした際は、ターゲットに対してリソースを割いてもらうことが求められます。

各部門によってターゲットが異なる、チャネルやアプローチ方法が異なってしまうといった問題を防ぐためにも、初動の段階でのきちんとした意識の共有と、施策ごとのフィードバックを行うことが大切です。

デジタルツール活用は必須

ABMが再注目されるようになった背景にあるのが、デジタルツールの活用です。従来、ターゲットとなる企業を1社ごとに深く分析するABMの手法は、調査だけで膨大なリソースを割いていました。

MAやCRMなどのツールによって、顧客情報の分析をある程度自動化できるからこそ、ABMの手法が可能になっているともいえます。スピードと正確さが求められる現在のマーケティングの市場では、ABM施策を行うためにはデジタルツールの活用は必須です。

ABMに向かない場合

ABMには不向きと言える、以下のような場合があることも覚えておきましょう。

新規顧客or商談期間が短い場合

先述した通り、ABMは自社に大きな利益(売上や自社のブランド価値向上)をもたらす大口顧客を特定し、その顧客に対して最適なアプローチを継続的に行うことです。

そのため、これまで実績のない新規顧客や、商談期間が短い顧客の場合にはABMの手法をとることが難しく、効果が見込みにくいと言えます。

営業・マーケティングが連携できない

メリットの部分で述べた通り、ABMの実施にあたっては、営業部門・マーケティング部門の協力が必要不可欠です。場合によっては、マーケティング視点を取り入れた営業組織の改革や、逆に営業視点を取り入れたマーケティング組織の改革を並行させる必要さえあります。

そういった中で、「営業部門とマーケティング部門はそれぞれ独立して、別々の業務を行う」という組織では、ABMを効果的に実施することが非常に難しいと言えるでしょう。

デジタルマーケティングの武器の1つに

ABMの手法は、LTV(顧客生涯価値)を重視する現在のマーケットととても相性が良く、多くの企業が取り入れています。

ABMでは、自社にとって価値の高い企業のプロファイル、キーパーソンとなる人物の発掘が重要です。この精度を上げるために、デジタルツールを積極的に活用しましょう。

施策と改善を重ねて精度が向上すれば、ABMはマーケティングの大きな武器になるはずです。