LTV(ライフタイムバリュー)とは?計算式と最大化するための6つの方法
LTV(Lifetime Value:顧客生涯価値)とは、顧客から生涯にわたって得られる利益のことです。つまり、1回の取引で得られる利益だけではなく、2回目以降の取引で得られる利益も含めて考えます。
新規顧客の獲得には大きなコストがかかります。せっかく獲得した顧客でも、取引が1回限りで終われば、得られる利益は少ないでしょう。しかし、顧客と信頼関係を築くことができて取引が続けば、獲得費用を回収することも、継続的な利益を生むこともできます。
そこで今回は、マーケティング施策を長期的視点で検討する際に欠かせない指標「LTV(ライフタイムバリュー)」についてご紹介します。
- ▼この記事で分かること
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- LTVが注目されている背景
- LTVの計算方法と覚えておきたい関連指標
- LTVを最大化させる方法
- LTVの向上に欠かせないツール
- マーケティングオートメーションツール
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Contents
LTV(ライフタイムバリュー)とは?
LTV(Lifetime Value:顧客生涯価値)とは、顧客から生涯にわたって得られる利益のことです。つまり、1回の取引で得られる利益だけではなく、2回目以降の取引で得られる利益も含めて考えます。
LTVが重要視されるようになった背景には、市場の飽和が挙げられます。成長市場であれば、新規の顧客を増やすことで売上を伸ばすことができるため、企業は魅力的な商品を作り、プロモーションをかけさえすれば良いのです。
しかし、すでに商品が飽和している成熟市場では、新規需要を喚起することは容易ではありません。新規顧客の獲得とともに、顧客の定着化を図ることが求められるようになります。
そのため、LTVはマーケティング戦略を進めるうえでの重要な指標となっているのです。
LTVが注目される5つの理由
市場の飽和によりLTVが重要視されるようになっていると上述しましたが、ここではLTVが注目される理由についてさらに詳しく解説していきます。
①新規顧客獲得が難しい
さまざまなサービスが飽和状態である多くの市場において、新規顧客を獲得することが難しくなっていることから、既存顧客との関係性を維持し、LTVを高めることが求められています。
また既存顧客との関係維持に比べ、新規顧客の獲得にはおよそ5倍のコストがかかると言われており、効率的に収益性の改善を行うためにも既存顧客の継続購入や、アップセル・クロスセルを行うことが重要とされています。
②顧客ロイヤリティの向上が求められている
顧客ロイヤリティとは、顧客が自社や自社商品に対して感じる「愛着」や「信頼」のことです。この顧客ロイヤリティを持つ顧客を「ロイヤルカスタマー」と呼び、自社への強い愛着や信頼から、継続的な購入が期待できるだけでなく競合他社に流れないことや、第三者へ商品を紹介してくれるといった特徴があります。
市場の縮小や、他社との差別化が難しくなった昨今、このロイヤルカスタマーを増やし維持することが重要であり、顧客ロイヤリティを測る指標の1つとしてLTVが注目されています。
③サブスクリプションサービスの増加
近年では、従来の売り切り型から定額料金を支払い続けることでサービスを利用することができるサブスクリプション型サービスが増加しています。
継続的に利用してもらうことで利益を得られる一方で、解約や他社への乗り換えなども考えられます。
そこで、自社サービスを長期的に継続してもらうためにさまざまな施策を行います。LTVはそうした収益性を測る指標としても活用されることから注目されているのです。
➃OnetoOneマーケティングの主流化
消費者の購買行動が多様化したことで、従来のマスマーケティングでは効果を得られにくくなっており、One to Oneマーケティングが求められています。
One to Oneマーケティングとは、それぞれの顧客に個別にカスタマイズされたコミュニケーションを提供するマーケティング手法です。これにより、企業はより正確に顧客のニーズに応えることができ、満足度を高めることにつながるのです。
このOne to Oneマーケティングでは、顧客ロイヤリティを高め、継続的に取引をしてもらうことが大切であるため、LTVが重要な指標とされています。
⑤3rd Party Cookieの規制が強まっている
LTVが注目される理由として、3rd Party Cookie規制の影響も挙げられます。3rd Party Cookieが規制されると、企業は従来の方法で顧客データを取得しにくくなります。
こうした背景から、企業はより自社のデータに基づいた長期的なLTVに注目するようになりました。顧客一人ひとりの価値を最大化し、長期的な関係を築くことが今後のビジネスにおいて重要な指標となってきているのです。
LTVの計算方法
LTVの計算方法はさまざまですが、最も簡単な計算方法は、下記のようになります。
LTV=平均顧客単価×収益率×購買頻度×継続期間
たとえば、平均顧客単価20万円、収益率50%、購買頻度1回/月(=12回/年)、継続期間5年の場合、LTV=20万円×0.5×12×5=600万円と計算されます。
ただし、この計算式には顧客獲得や維持に必要なコストが考慮されていません。
新規顧客獲得コストと既存顧客維持コストを加味すると、下記の計算になります。
LTV=平均顧客単価×収益率×購買頻度×継続期間
-(新規顧客獲得コスト+既存顧客維持コスト)
たとえば平均顧客単価、収益率、購買頻度、継続期間が先ほどと同じで、新規顧客獲得コストが300万円、既存顧客維持コストが100万円の場合、LTV=600万円-(300万円+100万円)=200万円と計算されます。
また、サブスクリプション型のサービスでは、チャーンレート(解約率)を利用したLTVの算出方法も一般的です。顧客が解約せずにどれだけの期間サービスを使い続けるかを逆算し、その期間に得られる収益を見積もるために活用します。
LTV = 平均購入単価 ÷ チャーンレート
サブスクリプション型のサービスや定期購入を促すような商品では、継続期間を長く利用してもらうことで収益が向上します。そのためには、このチャーンレートを下げることが重要です。
覚えておきたいLTVの関連指標
ここでは、LTVを効果的に活用するために覚えておきたい指標についてもご紹介します。
ARPU・ARPA
ARPU(Average Revenue Per User )とは、1ユーザーあたりの平均単価を表す指標です。SaaSビジネスにおいて、業績を正しく把握するためにもこのARPUが有効な指標とされています。
またARPA(Average Revenue Per Account)とは、1アカウント当たりの平均売上のことです。1人が1つのデバイスではなく、複数のデバイスを所持することが増えたことから、デバイスごとの平均売上ではなく、1アカウントごとの平均売上を指標としたのがARPAとなります。
CAC・ユニットエコノミクス
CAC(Customer Acquisition Cost)とは、新規顧客を獲得するためのコストを示した指標です。
一方ユニットエコノミクスとは、1顧客あたりの採算性を表す指標です。主にSaaSやサブスクリプション型ビジネスで用いられており、このユニットエコノミクスが適正であれば事業が健全状態であると判断できます。
MQL・SQL
MQL(Marketing Qualified Lead)とは、マーケティング活動によって創出された見込み顧客のことです。
またSQL(Sales Qualified Lead)とは、営業活動によって作られた見込み顧客のことで、自社製品・サービスに対するニーズが顕在化しており、直近での導入予定があるなど、顧客の中での購買意欲が明確になっていることが特徴です。
チャーンレート・リテンションレート
チャーンレートとは、解約率のことです。サブスクリプション型サービスでは継続的に利用してもらうことで収益性が向上します。そのため解約率を下げることが重要となるのです。
またリテンションレートとは、製品やサービスの継続率のことで、解約率とは反対に数値を高めることが収益性の向上につながります。
LTVを高めるマーケティング施策
LTVは、平均顧客単価、購買頻度、継続期間、収益率という要素を向上させることにより、LTVを高めることができます。ここでは、各要素について詳しく見ていきましょう。
平均顧客単価を上げる
顧客単価を上げる最も単純な方法として、商品の値上げを行う方法があります。
商品の値上げを検討する際は、なぜ自社の商品が選ばれるのかを考えてみてください。購入理由が商品価格以外の要素にある場合、大幅な値上げでなければ顧客離れの影響は比較的小さいと考えられます。
他にも、顧客単価を上げる方法としてアップセルやクロスセルも効果的です。アップセルとは、既存顧客にこれまで利用していた製品のバージョンアップを行ってもらう方法です。一方、クロスセルとは、顧客が購入した製品に加え、関連する製品やサービスをセット購入してもらう方法です。
購買頻度を高める
購買頻度を高めるには、顧客のニーズや買い替え時期に合わせた定期的なメール配信が有効です。
買い替え時期にメールを送ることで自社を購入の候補に入れてもらいましょう。このとき、競合他社と比較した際の自社の強みや特性も合わせて記載することが重要です。
継続期間を延ばす(解約率を下げる)
契約の継続期間が延びれば、その分LTVは向上します。一度商品を売って満足するのではなく、購入してくれた顧客をロイヤルカスタマーに育成することを考えましょう。
サブスクリプション型サービスの場合、顧客ロイヤリティが低いと解約や他社への乗り換えにつながります。解約を減らし契約期間を伸ばすためにも、顧客ロイヤリティを高めていきしょう。
収益率を高める(コストを下げる)
LTVの向上には収益率を高めることも重要となります。
販売価格を高く設定していても、コストも同様に高ければ大きな収益は得られません。収益の確保のためには、コストをできる限り抑え、収益率を高めることが重要です。
LTVを最大化する具体的な6つの手法
LTVを高めるための要素について解説しましたが、ここからはLTVを最大化するための具体的な方法についてご紹介していきます。
【方法1】商品の値上げ
平均顧客単価を上げるための単純な方法は、商品の値上げです。ただし値上げを実施する際は、値上げの理由を明確に顧客に説明し、納得してもらえることが大前提です。
「値上げで顧客離れが起きるのではないか」と抵抗を感じる方は多いでしょう。もちろん値上げによって一部の顧客は競合他社に流れてしまうかもしれませんが、自社を選び続けてくれる優良顧客も存在します。
【方法2】商品バリエーションの用意
平均顧客単価アップのために、価格の異なる複数の商品バリエーションを用意する方法、いわゆるアップセルです。顧客が選びやすくなり、そしてより価格の高い商品を選んでもらえる可能性が高まります。
高級品(松)・中級品(竹)・普及品(梅)の3つのラインナップを設けると、中級品が購入されやすい傾向があり、「松竹梅の法則」と呼ばれます。
購入してほしい中級品に高級品と普及品を加えることで、「商品価格は安いに越したことはないが、品質は落としたくない」という顧客心理が働き、中級品を選ぶという仕組みです。
【方法3】セット販売
単品販売ではなく、セット販売で平均顧客単価を上げる方法、いわゆるクロスセルも有効です。
複数の商品を扱っている場合は、同時に購入されることの多い商品の組み合わせを見つけ、顧客に提案してみてはいかがでしょうか。セット販売は自社にとってメリットがあるだけでなく、顧客も商品購入の手間を減らすことができます。
ただし、人気商品の購入者に対して、不人気商品を不当に同時購入させる「抱き合わせ販売」は独占禁止法違反であるため注意してください。
【方法4】原価抑制
モノづくりの企業は部品を購入して商品を製造する際、複数メーカーに打診する方法を採用しています。これはメーカー同士の競争原理を利用して、低い原価で部品を調達しようというものです。製造業では、同種類の部品を2社から購入してお互いを競わせる、2社購買もよく見られます。
【方法5】リマインドメールの配信
購買頻度向上のために、買い替え時期に合わせてリマインドメールを配信する手法も有効です。商品を必要とするタイミングでメールを配信し、自社商品を有力な購入候補に選んでもらいましょう。
今回商品を購入してもらえたからといって、次回も引き続き購入してもらえるとは限りません。買い替えを検討する顧客は他社商品との比較を行うため、自社商品の強みやメリット等を、しっかりメールに記載してください。
【方法6】メールマガジンの配信
顧客の気持ちをつなぎ留めておくために効果的な手法の1つに、メルマガの配信があります。
その際に気を付けたいポイントは、メルマガの内容が自社商品の売り込みばかりに偏らないようにすることです。たとえば商品の使い方や業界動向といった、顧客の役に立つ情報も盛り込んで、興味を持ってもらえる内容にしましょう。
メールマガジンの配信について、下記の記事も参考にご覧ください。
LTVの向上にはCRMやMAの活用がポイント
LTVを最大化させるためには、顧客一人ひとりに合わせたコミュニケーションを行うOne to Oneマーケティングが重要となります。これには、CRMやMAといったツールの活用が効果的です。
既存顧客情報を管理するCRM
CRMとは「Customer Relationship Management」の頭文字をとったもので、 顧客の個人情報やこれまでの購入履歴のほか、要望や問い合わせなど、顧客とのさまざまな接点を一元管理することができるツールです。
このCRMを活用することで、顧客行動への理解が深まり、それぞれのニーズに合った施策を打つOne to Oneマーケティングが可能になります。LTVの向上には、高い顧客ロイヤリティが必要であり、ロイヤリティをアップさせることにつながるCRMの活用は、LTVの向上にかかせないツールといえるでしょう。
見込み客の管理や育成をするMA
MA(マーケティングオートメーション)では、顧客の行動データや購入履歴、Webサイトの閲覧情報などを蓄積し、管理することができます。これらの情報をもとに、顧客のニーズや興味関心に応じてパーソナライズされたコミュニケーションを自動化することで、顧客満足度を向上させることができるでしょう。
またMAを使うことで、顧客の見込み度合いに応じたコミュニケーションを提供できます。各フェーズで適切なアプローチを取ることで、顧客が次のステージに進むのをサポートし、リテンション(顧客維持)率を高めます。
このようにMAを活用することで、顧客ごとにパーソナライズされたアプローチを自動的に提供し、エンゲージメントを強化しつつ、効率的にLTVを伸ばすことが可能です。企業にとって、MAの活用はLTVを最大化し、継続的に見込み顧客を育成する重要なツールといえます。
すべての企業に有効ではない?LTVを指標とする際の注意点
LTVを向上させることは、経営の安定やビジネスの成長にとっても欠かせない要素ですが、LTVの最大化を目指すにあたっては、注意点もあります。
まず、すべての業種でLTVの最大化が有効というわけではありません。LTVは、サブスクリプション型のサービスなど、顧客との長期的な関係を重視する事業において重要な指標です。これらの業種では、顧客が継続的に購入を続けることで企業に大きな利益をもたらし、その期間をできる限り延ばすことで収益の最大化を図ることができます。
しかし、一部の業種では、LTVを最優先に追求することが適切でない場合もあります。たとえば、住宅や自動車といった高価格で1回限りの購入が中心となる業界では、顧客が長期的にリピートする機会が少なく、1回の取引で十分な利益を得られるため、LTVに基づいた戦略が効果的に機能しないことがあります。
さらに、LTVを最大化するためには、顧客維持に向けたコストやリソースの投入が必要になります。特に、LTVの低い顧客層に対してコストをかけることは、ROI(費用対効果)を下げてしまうことにもなりかねません。
このように、LTVの最大化は非常に重要なマーケティング戦略である一方、すべての業種やビジネスモデルにとって最適な指標とは限らないため、企業は自社の特性に応じて柔軟に活用することが求められます。
おわりに
今回は、マーケティング施策を長期的視点で検討する際に欠かせない指標「LTV(ライフタイムバリュー)」についてご紹介しました。
市場の成熟化が進んで新規顧客の獲得が困難となり、顧客から長期的な利益を得ることが重要なマーケティング戦略となっています。顧客との関係を持続させるためには、定期的なコミュニケーションが不可欠です。
自社の利益を伸ばすためにも、LTV(ライフタイムバリュー)を高めて、収益の最大化を目指しましょう。